真性腸石を合併した回腸重複症の1例を経験したので報告する. 症例は35歳の女性. 突発的な下腹部痛を主訴に来院し, 右卵巣奇形腫茎捻転の診断にて開腹術が施行された. 開腹所見では, 回腸末端より約5cmの回腸前壁に径約6×5cmの腫瘤を認め, 内部には硬い結石が3個存在していた. 腫瘤を含む回腸部分切除術を施行した. 肉眼および病理組織所見より回腸重複症と診断した. 消化管重複症は比較的まれな先天性疾患で, 多様な腹部症状・検査所見を呈するため術前診断は難しいとされてい. また, 腸石は分析の結果, シュウ酸カルシウムを主成分とした真性腸石であり, 本邦報告例では自験例を含めカルシウム塩腸石として10例目である. 本症例のごとく真性腸石を合併した消化管重複症はこれまでに報告がなく, 本邦報告第1例目である.