日本消化器外科学会雑誌
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胃癌における脈管侵襲の臨床的意義とその規定因子
辻谷 俊一斉藤 博昭岡 伸一近藤 亮小西 伊智郎池口 正英前田 迪郎貝原 信明
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1998 年 31 巻 10 号 p. 2157-2161

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抄録

胃癌組織におけるリンパ管侵襲 (ly) と静脈侵襲 (v) の臨床的意義を調べ, それを規定する因子を検討した. 2,404例の胃癌で深達度, 腫瘍径, リンパ節転移などの癌の進展に伴ってly, vの陽性率が増加し, C領域胃癌で陽性例が多かった. 組織型はly (+) がporl, por2, mucに多く, v (+) がporlに多かった. またly, vはstage III胃癌の予後因子であった.腫瘍進展因子であるVEGFの癸現はly, Vの陽性率と相関し, 宿主の免疫応答を反映する樹状細胞の高度浸潤例は脈管侵襲と逆相僕し, また血清中可溶性IL-2受容体 (sIL-2R) 値の上昇は脈管侵襲と相関した. しかしVEGF, 新生血管, 樹状細胞ともstage III胃癌治癒切除例に限った検討ではly, vと有意の相関はなかった. したがって胃癌の脈管侵襲の予見には腫瘍の進行度, 組織型, 占居部位に加えVEGF発現, 樹状細胞数, sIL-2R値が有用と考えられた.

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