日本消化器外科学会雑誌
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大腸癌同時性多発性肝転移症例に対する肝切除術の意義
藪下 和久小西 孝司野島 直巳佐藤 貴弘木村 寛伸前田 基一黒田 吉隆辻 政彦三輪 淳夫
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1998 年 31 巻 12 号 p. 2327-2333

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抄録
過去15年間における大腸癌同時性肝転移手術症例のうち, 原発巣に対して治癒手術が可能であった76例の5年生存率は19.9%であり, 8例の5年以上生存例を得た. 肝病巣が肉眼的に切除可能であった治癒的肝切除群40例を, 肝切除が不完全, あるいは行われなかった非治癒的肝切除群36例と比較すると, 治癒的肝切除群の5生率は29.1%であり, 非治癒的肝切除群の4.9%に比べ有意に予後良好であった. 肝転移程度別では, H1における5生率は治癒的肝切除群31.1%, 非治癒的肝切除群0%, H3においては42.9%, 0%であり, H1のみならず, H3においても治癒的肝切除群の予後が有意に良好であった. また治癒的肝切除群の予後に, 肝転移個数, 肝転移巣の腫瘍径, 切除術式の各因子は有意な影響を与えなかった. 切除可能な症例であれば, 多発性肝転移症例においても, 積極的な肝切除術が予後向上に有用であると考えられた.
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