抄録
直腸早期癌255例 (m癌182例, sm癌73例) の選択術式, リンパ節転移および予後を検討し, 治療方針につき考察した. m癌およびsm1癌にはリンパ節転移はみられなかった. 脈管侵襲とリンパ節転移は, sm浸潤が進むに伴い増加した. また, リンパ節転移はリンパ節郭清を行った50例中5例 (10%) で, 全例sm2以深で, 脈管侵襲陽性であり, 脈管侵襲陰性例にはリンパ節転移はみられなかった. 以上よりm癌およびsm1癌は局所切除 (内視鏡切除術あるいは経肛門的腫瘍切除術) で根治可能と思われた. また局所切除で断端陰性となる症例では, まず局所切除を行い, 病理所見で壁深達度がsm2以深で, 脈管侵襲陽性の場合に追加腸切除を行うべきで, 腹会陰式直腸切断術の選択は, QOLの立場から慎重であるべきと思われた.