大腸切除術後に発生し, その後44年間放置された皮膚腸瘻の1例を経験した. その治療から長期間空置された大腸と肛門の機能および組織学的変化を検討しえたので報告する. 症例は69歳の男性で腸痩周囲の皮膚炎を主訴に来院した. 大腸はS状結腸と直腸のみ残存し, 皮下にて回腸と吻合されており, その吻合部が皮膚腸瘻を形成していた. 直腸生検では粘膜の慢性炎症細胞浸潤, 陰窩の乱れと萎縮, 粘膜表層のびらんが認められた. 手術は, 腸瘻部を含めた腸管切除および回腸直腸吻合術を施行した. 術後2か月間, 水様軟便がみられ, 廃用性の水分吸収機能障害によるものと考えられた. 術後3か月の直腸生検では, 炎症所見は消失していた. 肛門管最大静止圧は術前40cmH2Oと低値であったが, 術後3か月で80cmH2Oまで回復した. 肛門の再使用により, 低下した括約筋機能が回復したと考えられた.