抄録
最近10年間の90歳代大腸進行癌手術症例20例 (手術回数21回) について臨床的, 病理学的特徴を75-79歳症例103例と比較検討した.
さらにそれ以前12年間の90歳代手術例17例と比較した. 90歳代群では, 1) 臨床症状は顕出血と腸閉塞がおのおの38%ともっとも多く, 緊急手術の頻度は前期47%, 今期33%と両期とも対照群より有意に高率であった. 2) 切除率95%, 治癒切除率90%は対照群と有意差がなかった. 3) 手術死亡率4, 8%(前期24%) は対照群 (3.9%) と有意差なく, 両期とも手術死亡例は全例緊急手術例であった. 4) 術前高血圧, 糖尿病, 心電図異常の併存は対照群と有意差なく, 術後合併症ではせん妄が29%(p<0.01) に認められた. 5) Dukes分類ではB群が高率であった (p<0.05). 以上より90歳以上大腸進行癌は積極的な待機的治癒切除手術の対象であることを強調した.