抄録
大腸癌の術後補助化学療法の効果を統計学的に判定するためには, 手術単独群と比較するrandomized controlled study (以下, RCS) が必要であるが, 症例数の関係より1施設だけでRCSを行うことには大きな限界がある.したがって, 本稿では教室の成績は簡単に紹介するだけにとどめ, 本邦でこれまでに行われ結果が報告されている, 多施設規模 (主に全国的規模) の手術単独群との比較によるRCSの成績を中心に検討した.結腸癌においては, 6研究グループいずれも生存率に有意差を認めなかった.一方, 直腸癌においては6研究グループのなかで2研究グループだけが有意に良好な生存率を認めたにすぎず, さらに新しいプロトコール (抗癌剤の投与量, 投与期間やその組み合わせ, biochemical modulationの併用など) による臨床研究が望まれる.