日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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ISSN-L : 0386-9768
31 巻, 8 号
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  • 金本 彰, 山口 肇, 近藤 仁, 後藤田 卓志, 小野 裕之, 日月 裕司, 加藤 抱一, 渡辺 寛, 中西 幸浩
    1998 年31 巻8 号 p. 1833-1837
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    当院開設から1997年6月までの36年間, 術前未治療にて外科的切除もしくは内視鏡的粘膜切除された食道表在癌358例のうち扁平上皮癌334例を対象に多発表在癌と単発表在癌とを比較検討した.多発癌の頻度は28%で, 単発癌と比べ, (1) 男性優位, (2) 喫煙指数高値, (3) 咽頭癌の合併が高頻度, である点で有意であった.リンパ節転移率, 予後などに差を認めなかった.多発癌の副病巣は, (1) 1病巣が75%, (2) O-IIc, O-IIbが90%, (3) m癌が90%, (4) 腫瘍径 (長径) 1cm以内が65%, (5) 主病巣の口側もしくは肛門側3cm以内に67%が存在, といった特徴を有した.食道表在癌の診断, 治療, 経過観察において, 多発癌および他臓器重複癌の存在に留意することは極めて重要であると考えられた.
  • 大谷 昌道, 高山 澄夫
    1998 年31 巻8 号 p. 1838-1842
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1991-1996年の当科におけるStage IVb進行胃癌症例90例のうち24例にCDDP・UFT併用療法をneoadjuvant chemotherapy (以下, NACと略記) として施行し, 手術先行例66例と予後につき比較検討した.結果はCR 0例, PR 11例, NC 11例, PD 2例で奏効率は46%であった.NAC群のうちPR群とNC, PD群との間で生存期間に有意差を認めた.しかし, 手術先行群とNAC群全体, およびNAC群のPR群と手術先行群との間に有意差は認められなかった.
    NACの適応は術前診断で原発巣摘出不可能と考えられる症例で, NACが奏効し切除可能となる場合にその適応と考えられた.
  • 佐々木 亮孝, 村上 雅彦, 佐藤 信博, 舩渡 治, 新田 浩幸, 島田 裕, 川村 英伸, 須藤 隆之, 菅野 千治, 斎藤 和好
    1998 年31 巻8 号 p. 1843-1849
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝膵同時切除 (HPD) 9例および肝切除13例を対象とし, 術中肝静脈血酸素飽和度 (Shvo 2) 測定を行い, 術後肝機能との関連につき検討した.Shvo 2値は肝の脱転操作, Pringle法および肝十二指腸間膜内リンパ節郭清の際に低下した.術中Shvo 260%以下低下時間は, 肝切除群では38.5±37.9分, HPD群では60.0±52.7分であった.Shvo 2 60%以下低下時間と術後T.Bil最高値の関係では, 肝切除とHPDをあわせた全例およびHPD群で有意の正の相関を認めた (おのおのp<0.01, p<0.05).術中Shvo2 60%以下低下時間と肝切除終了時の動脈血中ケトン体比の関係では, 全例, 肝切除群, HPD群いずれも有意の相関はなかった.Shvo2は術中の肝虚血侵襲をリアルタイムに反映し, 術後肝不全を予測するパラメーターの1つとして有用である可能性が示唆された.
  • とくに胆管炎high risk groupの同定とその管理について
    石田 英文, 山本 正博, 大橋 修, 藤原 英利, 小野山 裕彦, 黒田 嘉和, 坂本 攝, 山崎 克人, 河野 通雄, 松井 美詠子
    1998 年31 巻8 号 p. 1850-1856
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除後, 1年以上経過しfollow可能であった35症例の遠隔時成績について胆管炎を中心に, 血液生化学的検査, 各種画像検査および質問票によるアンケート調査から検討を行った.胆管炎確診例は5例 (14.3%) で全例PD-II症例であった.原因として肝門部における胆汁うっ滞と挙上空腸でのうっ滞が考えられた.胆管炎群は胆管炎非発症時においても血清ALP値の変動が激しく, 高値が遷延するものが多く, 胆道シンチグラフィーにおいて胆汁のうっ滞傾向が認められた.胆管炎確診例5例中4例は, 生活指導にて再発が防止され社会復帰が可能であった.遠隔時のQOLを向上させるには, これら血清ALP値の高い症例に画像診断を加えて胆管炎のhigh risk groupを見出し, 厳重なfollow upと生活管理が重要であると考えられた.
  • 袖山 治嗣, 花崎 和弘, 若林 正夫, 五十嵐 淳, 中田 伸司, 川村 信之, 宮崎 忠昭
    1998 年31 巻8 号 p. 1857-1861
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病10症例に腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.最近の5症例には, 頭側高位の右側臥位でハーモニック・スカルペル (LCS) を用いて胃脾間膜などの切離を行い, 最後にエンドカッターで脾門部を一括処理する術式を施行した.1例は出血のため開腹に移行したが, 他の4例では出血のコントロールも容易であり, 平均手術時間は1時間37分で従来の腹腔鏡下脾臓摘出術5例の平均3時間10分より有意に短時間で開腹手術と同様であった.術後経過も順調で, 重篤な合併症も経験しなかった.本術式は特発性血小板減少性紫斑病症例に対する優れた術式であると考えられた.
  • 中瀬 一, 河野 浩二, 関川 敬義, 飯塚 秀彦, 松本 由朗
    1998 年31 巻8 号 p. 1862-1868
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    消化器癌患者の周術期における免疫能の変動を, 単球表面抗原と血清サイトカインをパラメーターとして検討した.胃癌群 (23例), 食道癌群 (右開胸開腹術, 8例), 膵癌群 (膵頭十二指腸切除術, 7例), 大腸癌群 (10例) を対象に, 術前および術後1, 3, 5, 7, 14日目の末梢血単球表面抗原HLA-DR, およびCD11bのmean fluorescence intensity (MFI) をフローサイトメトリーにて, また血清IL-6, IL-8, IFN-γ値をELISA法によって測定した.食道癌群のCD11b発現は, 他群に比べ術後低下したまま回復せず, IL-8値は術前より全経過を通じて高値を示した.膵癌群ではCD11b発現は術後一時的に上昇したが, 術後14日目に食道癌群と同様に低値を示した.食道癌や膵癌に対する侵襲の大きな手術においては, 単球の接着に関与するCD11bの発現低下が認められ, 高サイトカイン血症の病態において, 単球機能の変化が大きく関与していると思われた.
  • 小向 慎太郎, 山洞 典正, 山本 智, 岡田 貴幸, 薮崎 裕, 薛 康弘, 岡 邦行, 畠山 勝義
    1998 年31 巻8 号 p. 1869-1873
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性.主訴は食思不振.上部消化管内視鏡検査にて上門歯列より32cmの食道前壁に径4cmの隆起性病変を認め, その腫瘤に接しルゴール不染帯を認めた.生検にて扁平上皮癌と診断されたため, 食道亜全摘術を施行した.病理組織診断では隆起性病変は深達度mpの類基底扁平上皮癌, ルゴール不染帯は深達度smの扁平上皮癌であった.本症例は術後5か月で局所再発および, 胸膜転移再発で死亡した.類基底扁平上皮癌は粘膜下に主座を置き正常粘膜に覆われていることが多いため術前診断が困難である.予後は不良であり, 有効な治療法の確立が望まれる.
  • 和田 大助, 森本 重利, 露口 勝, 田中 直臣, 惣中 康秀, 福本 常雄, 山崎 眞一, 仁木 俊助
    1998 年31 巻8 号 p. 1874-1878
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で, 発熱, 全身倦怠感を主訴として, 近医から精査目的で当院内科に紹介された.腹部超音波およびCT検査で, 肝左葉を占居する腫瘤を認めた.血管造影ではやや血管増生像と腫瘍濃染を認めた.術中所見では, 腫瘍は肝左葉を中心に存在し, 横隔膜に一部浸潤を認め, 術中迅速病理検査で, malignant fibrous histiocytoma (MFH) と診断されたため, 横隔膜合併肝左葉切除術を施行した.摘出標本では, 腫瘍の大きさは20×10×13cm, 重量は1,300gであり, 黄白色で壊死と膿瘍の部分を認めた.病理組織学的検索の結果, MFH, inflammatory typeと診断された.現在外来で経過観察中であるが, 局所再発が疑われている.肝原発の悪性線維性組織球腫の報告例は非常にまれであり, 現在まで我々の検索しえたかぎりでは22例にすぎず, 文献的考察を加え報告する.
  • 足立 淳, 年光 宏明, 佐伯 俊宏, 内山 哲史, 村上 卓夫
    1998 年31 巻8 号 p. 1879-1883
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵胆管合流異常に合併した胆嚢腺扁平上皮癌症例を経験したので報告する.症例は67歳の女性.上腹部痛を主訴とし, 血液検査では肝酵素異常を示すのみであった.腹部US, CT, MRIで胆嚢体部に内腔に突出する腫瘍を認めた.ERCPでは新古味分類IIbの膵胆管合流異常があり, 肝外胆道, 胆嚢管の拡張を認めた.術中の胆嚢内, 胆道内胆汁細胞診にて腺扁平上皮癌の診断を得, リンパ節郭清を伴う膵胆管合流部から肝門部の胆管切除, 肝床切除を伴う胆嚢摘出, 胆管空腸吻合を施行した.腫瘍はGb, hep, 結節浸潤型で, 病理組織ではss, hinf, binf0, t2, bm0, hm0, em0, n1 (+), stage 2, 中分化型の腺扁平上皮癌であった.そして, 腺癌と深部の扁平上皮癌の間に移行像を認め, 扁平上皮癌化生説を支持するものであった.また, 転移リンパ節は, ほとんどが扁平上皮癌であり, 予後不良を予感させた.胆管内のamylaseは高値を示し, 胆嚢癌発生の1因と考えられた.
  • 内本 和晃, 中島 祥介, 庄 雅之, 金廣 裕道, 久永 倫聖, 大山 孝雄, 中野 博重, 市島 國雄
    1998 年31 巻8 号 p. 1884-1888
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は40歳の女性.検診の超音波検査で膵に腫瘤を指摘され, 精査目的に当科紹介入院となった.血液生化学検査に異常なく, 腹部CT, 超音波検査で膵体部に2.5cm大の嚢胞性の腫瘤像を認めた.脾動静脈への浸潤や周囲リンパ節の腫大は認めなかった.血管造影検査で, 腫瘍血管や腫瘍濃染はみられず, hypovascular tumorが考えられた.嚢胞性膵腫瘍の診断のもと, 脾動静脈を温存し体尾部切除術を施行した.切除標本では, 腫瘤の大きさは2.5×2.5×1.5cm大で, 大部分嚢胞性で周囲に一部充実部分を認めた.HE染色, 各種免疫組織染色の結果, 非機能性膵島細胞腫瘍と診断された.本症は悪性の頻度が高いためリンパ節郭清も含めた標準的膵切除術が必要と報告されてきた.しかし, 術前に確定診断が得られなくても, 原発巣が3cm未満であれば他の嚢胞性腫瘍でもリンパ節転移はまれで, 縮小手術を行った場合でもすぐに再手術をすることなく, 経過観察が可能であると考えられた.
  • 山口 健太郎, 勝部 隆男, 土屋 玲, 遠藤 俊吾, 島川 武, 加藤 博之, 成高 義彦, 芳賀 駿介, 小川 健治, 梶原 哲郎
    1998 年31 巻8 号 p. 1889-1892
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は83歳の男性. 腹痛と発熱を主訴に来院した. 腹部CT検査にて腸間膜のdensityの上昇と, その内部にhigh densityな索状影を認めた. 腸間膜脂肪織炎を疑うも, 腹膜刺激症状が強く認められたため, 汎発性腹膜炎の診断で開腹した. 小腸間膜のほぼ全域に肥厚を認め, 小腸の血行障害も認められた. 術中, 腸間膜脂肪織炎と判断し, 小腸間膜の減張切開, 生検および腹腔ドレナージ後閉腹した. 病理組織学検査でも腸間膜脂肪織炎の診断であった. 術後第1病日よりステロイドを投与し, 腹部症状の改善とCRPの低下を認めた. また自験例では経時的に腹部CT画像を観察し, この疾患に特徴的と思われる腸間膜のdensityの上昇と, 症状改善に伴うdensityおよびvolumeの正常化が認められたので, 併せて報告した.
  • 織畑 道宏, 佐々木 秀雄, 畑 真, 中川 浩之, 掛川 暉夫, 佐川 文明
    1998 年31 巻8 号 p. 1893-1896
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    妊娠中の虫垂炎も虫垂憩室も比較的まれな疾患で, 妊娠中の虫垂炎は診断と治療に注意を要する. われわれは, 妊娠15週に虫垂憩室炎を発症した1例を経験した. 症例は, 28歳の女性. 右下腹部痛を主訴に来院. 妊娠15週であったが, WBC17,100/μl, CRP2.9mg/dlと高く, 妊娠中の虫垂炎の診断で入院となった. 超音波上胎児に異常は認められず同日虫垂切除術を行った. 虫垂は後腹膜に腫瘤を形成していた. 摘出虫垂は先端がふたつに分かれ, 虫垂の先端2/3に小さな憩室を全周性に多数認めた. 病理組織学的に仮性憩室と診断された. その後妊娠30週で早産となった. 検索しえた本邦の虫垂憩室の手術切除例は自験例を含め113例で, 妊娠中の虫垂憩室炎は自験例が初めてであった.
  • 小林 直之, 渡邊 昌彦, 安井 信隆, 石原 雅巳, 奈良井 慎, 立松 秀樹, 徳原 秀典, 寺本 龍生, 北島 政樹, 向井 万起男
    1998 年31 巻8 号 p. 1897-1901
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Peutz-Jeghers (PJ) 症候群で小腸ポリープが悪性化し, 進行癌へと進展したと考えられる1例を経験した. 症例は27歳の男性で, 主訴は食思不振, 下腹部痛. PJ症候群と診断のもとに, 3歳と14歳時に結腸および小腸ポリープ切除. 15歳時, 癒着性イレウスに対し癒着剥離術を施行. 小腸造影にてTreitz靱帯の近傍に狭窄が存在し, その口側および肛門側にそれぞれ径4cmと3cmの陰影欠損を認めた. 小腸腫瘍の診断にて開腹術を施行した. Treitz靱帯の肛門側に5×6cm大の潰瘍ともなう不整な隆起性病変を全周性に認めた. その腫瘍に接して口側, 肛門側にそれぞれ径4cmと3cmのポリープが存在した. 空腸部分切除術を施行した.組織学的診断は高分化腺癌で, PJポリープの過形成の腺管群と癌との混在が認められた. 核異型を呈する腺管群は漿膜下層まで浸潤し, さらに壁在リンパ節に転移を認めた. PJ症候群の癌化例でリンパ節転移を認める進行癌はきわめて少なく, ポリープの癌化を検討する上で貴重な症例と考えられ, 報告する.
  • 平田 静弘, 岸川 英樹, 永渕 一光, 山崎 徹, 米増 博俊
    1998 年31 巻8 号 p. 1902-1906
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    同時性に多発した大腸原発のT細胞性悪性リンパ腫を経験した. 症例は89歳の男性, 主訴は下痢. 注腸造影検査, 大腸内視鏡検査にて, S状結腸, 直腸に潰瘍性病変を認め, 同部よりの生検にて上記と診断された. 手術待機中にS状結腸腫瘍部が穿孔をきたし, 緊急手術を施行した. 切除標本では大小の病変が多発し小腸にも病変を認めた. 本症例は術後も血性水様便が持続し, 貧血, 低蛋白血症が進行して71日目に死亡したが, 残存腸管にもT細胞性悪性リンパ腫が多発していることが推察された. 本疾患はまれで, 本邦では16例の報告がみられたが, B細胞性悪性リンパ腫と比べ予後は極端に悪く, 注意すべき疾患であると考えられた.
  • 馬場 秀文, 田中 克典, 菅 重尚, 鈴木 文雄, 大高 均, 守谷 孝夫
    1998 年31 巻8 号 p. 1907-1911
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    Virchowならびに大動脈周囲リンパ節転移を有した進行S状結腸癌に対して根治度Bの切除術を施行し, 術後6年現在, 無再発生存が得られた症例を経験したので報告する.
    症例は48歳の女性で, 1991年9月左鎖骨上窩の腫瘍にて来院した. リンパ節生検および注腸検査よりVirchowリンパ節転移を伴った進行S状結腸癌と診断された. 11月8日S状結腸切除ならびにD4郭清を施行した. 病理組織診断は中分化型腺癌, ss, n4 (+), P0, H0, M (+), ow (-), aw (-), ly (3), v (3), stage IVであった. リンパ節転移 (合計16/48) を認め, 特に腹部大動脈周囲には多数の転移 (9/30) が認められた. 術後補助療法として, 5年間UFT600mgの内服を行ったが, 現在術後6年, 無再発生存中である.
    n4症例の予後は一般的に不良とされているが, 自験例のように積極的な手術および補助療法により予後が改善される症例も認められると思われたので報告した.
  • 中原 雅浩, 岡島 正純, 有田 道典, 小林 理一郎, 正岡 良之, 小島 康知, 豊田 和広, 川堀 勝史, 浅原 利正, 土肥 雪彦
    1998 年31 巻8 号 p. 1912-1915
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    今回, 我々はserrated adenomaの多発を認めた若年者大腸癌の1例を経験したので報告する. 症例は29歳の女性. 腹部腫瘤の自覚で近医を受診. 精査にて横行結腸に限局潰瘍型の腺癌とS状結腸から横行結腸にかけてポリープの多発を認めた.結腸右半切除術・D3のリンパ節郭清を施行した. 病理組織学的所見では限局潰瘍型病変は高分化腺癌 (壁深達度se, 脈管侵襲ly1, v1)) であった. 切除標本上の多数の小隆起性病変はhyperplastic polypとserrated adenomaであった.正常部・腫瘍部に対し遺伝子不安定性を検討したがreplication errorは認めなかった. 補助化学療法はテガフールーウラシル配合剤300mg/dayの経口投与を施行している. 術後経過良好にて軽快退院し, 術後18か月の現在, 癌の転移・再発, 第2癌の発癌は認めていない.
  • 中村 吉貴, 浜辺 豊, 生田 肇, 成田 晃一, 白石 勉, 宇佐美 真, 山本 正博, 黒田 嘉和
    1998 年31 巻8 号 p. 1916-1920
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性. 1990年4月, 胸部食道癌で右開胸胸部食道全摘, 胃管による胸骨後経路再建術を施行した. 1995年7月下旬より呼吸苦が出現し当科緊急入院となった. 精査にて下咽頭右披裂部の高分化型扁平上皮癌と診断し, 同年11月, 下咽頭喉頭頸部食道全摘, 両側頸部郭清術を施行した. 再建は遊離空腸を中咽頭と胃管の間に間置したが遊離空腸胃管吻合部の縫合不全を発症し保存的には閉鎖しないため, 1995年12月11日, 皮膚管で再建した. DP皮弁 (胸三角皮弁) を作成し表皮面を内腔とする筒状の皮膚管を形成し空腸, 胃管と吻合した. その後, 鎖骨, 肋骨切除部の骨髄炎が遷延し3回にわたり腐骨切除術を施行, また, 1996年11月, 皮膚管皮膚瘻を発症し, 局麻下瘻孔閉鎖術を施行した. 1997年3月中旬より皮膚管胃管吻合部の狭窄を認め, 四月中旬, 狭窄部切除再吻合術を施行した. 5月中旬退院し, 外来にて経過観察中である.
  • 柚木 靖弘, 竹内 仁司, 大島 祐, 安井 義政, 田中屋 宏爾, 小長 英二
    1998 年31 巻8 号 p. 1921-1924
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝硬変を合併した胃癌術後に生じた難治性腹水に対してDenver®Ascites Shunt System (Percutaneous Access Kit) を用いた腹腔-鎖骨下静脈シャント術が有効であった1例を経験した.本法により腹水の著明な減少が得られ, 術後25日目には独歩での退院が可能となった.
    本法は従来の腹腔-内頸静脈シャント術に比べカテーテルの走行が直線化されることにより術後のシャント不全が防止できるだけではなく, 経皮的穿刺法により手術手技が簡便化されており, 手術時間が短縮される点からも優れた方法と考えられる.
  • 尾関 豊, 立山 健一郎, 今井 直基, 角 泰廣, 坂東 道哉, 東平 日出夫, 金子 順一, 東 正樹, 吉田 直優
    1998 年31 巻8 号 p. 1925-1929
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    門脈本幹に腫瘍栓が進展した肝細胞癌の手術中に, 残肝側の門脈内に腫瘍栓が逸脱した症例を経験し, 逸脱腫瘍栓の除去に成功したので報告する.
    症例は48歳の男性.画像診断で肝右葉前区域を中心とした12cm大の肝細胞癌を認めた.腫瘍は門脈前枝から右枝に至る腫瘍栓を形成し, 下大静脈にも進展していた.このため, total hepatlc vascular exclusion下に, 肝右三区域切除術をanterior approachで施行した.肝門部処理を先行させたが, 門脈右枝の切離前に門脈腫瘍栓が流出し, 残肝となる外側背側亜区域S2の左半分が暗赤色に変色した.術中超音波検査でS2の門脈枝内に腫瘍栓を認めた.門脈横走部を切開し, Fogartyカテーテルを挿入して腫瘍栓を摘出した.すると変色域の色調は直ちに回復した.術後経過は良好で, 第54病日に退院した.
  • 山名 秀明
    1998 年31 巻8 号 p. 1930-1935
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    厚生省がん研究助成金「固形がんの集学的治療の研究」班の食道グループでは, 第3次研究として術後放射線治療 (50GyのT字射) と術後化学療法 (cisplatin/vindesine, CDDP/VDS) の無作為比較試験 (RCT) を行ったが, 両群の予後に差を認めなかった.そこで次の第4次研究では手術単独群と術後化学療法群 (CDDP/VDS) のRCTを施行したが, 本研究でも両群の予後に差を認めなかった.しかし, リンパ節転移陽性例では化学療法群の生存曲線が良好な傾向 (p=0.134) を示し, 奏功率の高い薬剤を使用すると予後が向上する可能性が示唆された.またリンパ節転移陰例では, 予防的化学療法の必要性はないと考えられた.一方, adhesive tumor cell culture system法によるin vitro抗癌剤感受性試験の多施設共同研究を行ったが, 本試験と臨床効果との相関性は認めなかった.
  • 久保田 哲朗
    1998 年31 巻8 号 p. 1936-1940
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃癌の化学療法感受性は低く, 各薬剤の奏効率は単剤で20%程度で, 多剤併用においても40%程度に留まっている.胃癌の補助化学療法の生存期間延長については欧米では否定的なmeta-analysisが報告されているが, 本邦では肯定的な成績も多い.われわれは胃癌補助化学療法の選択に抗癌剤感受性試験が有用であることをretrospective studyにおいて見い出し, 特に無効抗癌剤の投与には手術単独群と比較して予後の延長効果が認められないことを明らかにした.さらにblind法による多施設共同研究において, 同一化学療法で治療された抗癌剤感受性群の予後は低感受性群よりも推計学的に有意に良好であることを示した.胃癌補助化学療法の選択には抗癌剤感受性試験が有用である.
  • 畠山 勝義
    1998 年31 巻8 号 p. 1941-1946
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    大腸癌の術後補助化学療法の効果を統計学的に判定するためには, 手術単独群と比較するrandomized controlled study (以下, RCS) が必要であるが, 症例数の関係より1施設だけでRCSを行うことには大きな限界がある.したがって, 本稿では教室の成績は簡単に紹介するだけにとどめ, 本邦でこれまでに行われ結果が報告されている, 多施設規模 (主に全国的規模) の手術単独群との比較によるRCSの成績を中心に検討した.結腸癌においては, 6研究グループいずれも生存率に有意差を認めなかった.一方, 直腸癌においては6研究グループのなかで2研究グループだけが有意に良好な生存率を認めたにすぎず, さらに新しいプロトコール (抗癌剤の投与量, 投与期間やその組み合わせ, biochemical modulationの併用など) による臨床研究が望まれる.
  • 高田 忠敬
    1998 年31 巻8 号 p. 1947-1952
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵癌の術後補助療法は欧米では化学・放射線療法が一般的であり, 局所制御には有用であるとの見解が多いが, 遠隔成績の明らかな改善は証明されていない.術後肝局所療法も有望な治療のひとつであるが, 最近, 欧米では術前, 術中の外科補助療法の有用性を問うプロトコールが進行中である.胆道癌の術後補助療法については, 放射線療法の有用性が散見される程度である.日本膵・胆道癌外科補助療法研究会の切除例における無作為比較試験の成績では, 非治癒切除胆のう癌で全身化学療法による生存期間の改善を認めたが, 膵, 胆管癌では認めていない.この成績は非切除例のFAM療法により胆のう癌に病勢抑制が確認された結果に通ずるところがある.CD-DSTによる膵・胆道癌16例の薬剤感受性試験の結果では全例primary cultureに成功し, 5-FU, MMC, ADRの感受性が高く, 膵癌よりも胆道癌で有効判定率が高い傾向であった.現在症例を追加し, 臨床効果との相関を検討中である.
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