日本消化器外科学会雑誌
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膵管狭細型慢性膵炎と診断した閉塞性黄疸の1例
待本 貴文中村 肇坂井 義治岡崎 和一山岡 義生
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1999 年 32 巻 12 号 p. 2669-2673

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抄録

膵管狭細型慢性膵炎と診断し, ステロイド治療により改善した閉塞性黄疸の1例を経験した. 症例は37歳の男性. 特に誘因なく心窩部痛を訴え, 急性膵炎の診断にて入院. 血清アミラーゼは345IU/Lと上昇, 腹部CTでは膵はび慢性に腫大するも腫瘤, 主膵管拡張は認めなかった. 徐々に肝胆道系酵素が上昇, CTでも総胆管の拡張を認め, 落下結石に伴う膵炎, 胆管炎を疑ったが, ERCPにて総胆管結石は認めず, 下部胆管, 主膵管に平滑な狭窄を認めた. 膵管狭細型慢性膵炎を疑い, 自己免疫疾患との関連を検索, 抗Lactoferrin抗体が陽性であったため, プレドニン投与を開始, 2週間後, さらに6か月後のERCPにて下部胆管, 主膵管の狭窄は著明に改善した. 最近, 自己免疫の関与が考えられるステロイド治療が有効な膵管狭細型慢性膵炎という概念が注目されている. こういった病態を認識し, ステロイド投与による軽快の可能性を探ったうえで手術適応を検討すべきである.

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