日本消化器外科学会雑誌
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32 巻, 12 号
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  • 中野 智文
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2621-2630
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道再建胃管におけるprostaglandin E1(PGE1)の全身静脈内投与と局所動脈内投与による血流改善効果を検討するため, 雑種成犬を用いて再建胃管モデルを作製した. 実験群として, 1)対照群, 2) 生理的食塩水(生食)局所動脈内投与群, 3)PGE1全身静脈内投与群, 4)PGE1局所動脈内投与群の4群を作製した. 再建胃管先端部の組織血流量(PU), 組織酸素飽和度(ISO2), 胃粘膜下pH を経時的に測定し, 同時に組織学的所見も検討した.
    胃管先端部のPU, ISO2, pH は生食局所動脈内投与群では改善しなかったが, PGE1投与により有意な改善がみられた. 特に, 局所動脈内投与群では静脈内投与群に比べて有意に良好であった. 組織学的にもPGE1局所動脈内投与群では, 粘膜上皮の変性像は見られず, 毛細血管の拡張や間質浮腫は早期に改善した.
    PGE1局所動脈内投与法は再建胃管の微小循環を改善し, 食道胃吻合部の縫合不全発生予防策としての有用性が示唆された.
  • 孝冨士 喜久生, 武田 仁良, 青柳 慶史朗, 矢野 正二郎, 村上 直孝, 堀 晴子, 寺崎 泰宏, 白水 和雄
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2631-2636
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    幽門側胃切除術を行った根治度A男性胃癌患者9例を対象として, 胃切除術の骨塩量と骨代謝に及ぼす影響について検討した. Dual X-ray absorptiometry (DXA) 法によるBone mineral density (BMD), BMD Y%, 血中のbone specific alkaline phosphatase (B-Alp), intact-osteocalcin (I-TC), intact-parathyroid hormone (I-PTH), 1α, 25 (OH) 2D3, Ca, P, 尿中のpyridinoline (Pyd), deoxy-pyridinoline (D-Pyd)を術前, 術後(6か月, 12か月)に測定した. 術前のBMD, BMD Y%は, 術前体重と有意な相関がみられ(p<0.05), 術前のPydおよびD-Pydは年齢と有意な相関がみられた(p<0.05). 術前後の推移では, BMD, BMD Y%とも術後に減少した. 一方, I-OCは術後6か月, B-Alpは術後12か月でそれぞれ有意な増加がみられ(p<0.05), Pydも術後6か月, 12か月で有意な増加がみられた(p<0.05). 以上より胃切除後早期に骨形成と骨吸収が同時に亢進しており, 骨障害対策が必要と思われた.
  • 仁木 正己, 野村 栄治, 馬渕 秀明, 中村 素行, 西口 完二, 奥沢 正昭, 太田 雅之, 谷川 允彦
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2637-2642
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    スキルス胃癌の形成機序および発育進展様式を究明する目的で, 胃癌原発巣におけるTGF-βの発現状態を検索した. さらに, 胃癌術前患者の血漿中TGF-β1値を測定して, その臨床的意義についても検討を加え, 以下の結果を得た. 1) TGF-β発現陽性率は非スキルス進行胃癌38.5%(15/39), スキルス胃癌74.3%(26/35)でありスキルス胃癌で有意に高率であった. 2) 進行胃癌治癒切除例ではTGF-βの発現率が腹膜再発例で非再発例よりも有意に高率であった. 3) TGF-βの発現は蛋白レベルだけでなくmRNA レベルでも認められた. 4) 血漿中, TGF-β1値はスキルス胃癌患者: 17.8±11.7(ng/ml)が非スキルス進行胃癌患者: 8.6±8.3(ng/ml)に比べて有意に高値であった. 以上の結果, TGF-βはスキルス胃癌と密接な関連があると考えられ, その発現の有無は術後腹膜再発の予測になりえると推察された. また, 血漿中TGF-β1値の測定は胃癌の進展様式を術前に推察するのに有用であると考えられた.
  • 患者側からみたday surgeryへの移行の是非
    畍村 泰樹, 藤岡 秀一, 今井 貴, 鈴木 旦麿, 三澤 健之, 村井 隆三, 吉田 和彦, 小林 進, 山崎 洋次
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2643-2648
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    今後, day surgery(DS)への移行が予測される腹腔鏡下胆曩摘出術(LC)施行患者の意識調査を施行した. 希望入院時期は術前日: 55%, 2~3日前: 43%, 術当日: 2%であり, また当日入院は忙しさよりも個々の価値観から派生すると考えられた. 83%以上が入院期間延長による負担増額を気にせず入院していた. 民間の保障制度には80%が加入し, うち86%が請求していた. 術後入院期間短縮を考慮する負担増額は1万円/日程度と思われた. 術後入院期間は全例で4.5±1.9日, 非常に多忙, 多忙, やや余裕あり, 余裕ありそれぞれ3.7±0.8, 4.3±1.9, 4.5±1.9, 5.2±2.0日で, 余裕のある者で有意に長かった. しかし体験した程度でよいとする者が87%を占め, 短縮希望者は8%に止まった. うち自己負担額の増域によらず積極的に早期退院を望む者は全体の3%に過ぎなかった. 現行医療保険制度内では, 本調査施行患者はLCのDS化にあらゆる面で肯定的とは考えられなかった.
  • 小島 則昭, 坂下 文夫, 本多 俊太郎, 林 幸貴, 古田 智彦, 森 秀樹
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2649-2653
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    進行胃癌を併存した完全内臓逆位症の1例を経験し, 自験例を含めた55例につき文献的考察を加えた.
    症例は66歳の男性で, 学童期に右胸心を指摘されていた. 今回, 吐血を主訴に来院し, 精査の結果進行胃癌と診断され開腹術を施行した. 癌は胃体上部小彎側に存在し, D2リンパ節郭清を伴う胃全摘術とρ型Graham変法による再建術を行った. 病理組織検査でpap>tub, se, INFβ, int, ly2, v2, ow (-), aw (-), n1, H0, P0のstage IIIaであった. 内臓逆位症は胃, 肝臓, 膵臓, 主要血管系を含め上腹部内蔵がすべて左右逆転位に存在していた.
  • 広瀬 和郎, 石田 誠, 藤田 邦博, 前田 浩幸, 五井 孝憲, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 明夫, 中川原 儀三
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2654-2658
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は72歳の男性. 大動脈周囲リンパ節転移と肝転移H2を伴う2型進行胃癌に対し, 胃全摘・膵脾合併切除, 肝転移巣切除, D4リンパ節郭清を行ったが, 大動脈周囲リンパ節が完全摘除できず, 非治癒切除となった. 術後化学療法として, 5-FU, adriamycin, mitomycin C (MMC)の肝動注, doxifluridineの内服, および, cisplatin, MMC, etoposide, pirarubicinの静注を行い, 外来でtegafur内服とlentinan静注を継続した. 遺残した大動脈周囲リンパ節転移は術後1年6か月の腹部CTスキャンで消失し, complete responseが5か月間得られた. 患者の状態は良好に保たれ, 血清CEAとimmunosuppressive acidic proteinは術後4年6か月まで正常値を維持した. 術後5年2か月に縦隔リンパ節再発により死亡したが, 肝再発は認めなかった. 本症例の長期生存には, 減量手術と術後早期の導入化学療法が奏効したことに加え, 長期の維持免疫化学療法が寄与したことが示唆された.
  • 打出 啓二, 柏崎 正樹, 間狩 洋一, 土居 貞幸, 田中 伸生, 直井 正紀, 丸山 博英, 藤本 高義
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2659-2663
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃切除後の吻合部潰瘍による胃空腸横行結腸瘻は比較的まれで, 吻合部潰瘍の重篤な合併症の1つであり, 本邦では1931年から1998年まで71例の報告しかない. 十二指腸潰瘍穿孔に対して, 幽門側胃切除術 (結腸後B-II法) 後, 13年を経過して診断された胃空腸横行結腸瘻を経験したので報告する.
    症例は37歳の男性. 慢性下痢, るいそう, 臀部痛を主訴に入院. 13年前, 十二指腸潰瘍穿孔に対して, 幽門側胃切除術 (結腸後B-II法) の既往がある. 注腸X線検査, 小腸二重造影検査などの結果, 胃空腸吻合部と横行結腸の間に内瘻を認めた. 残胃亜全摘, 横行結腸部分切除術, 全幹迷切術, 胃空腸Roux-enY吻合術を行った. 術後, 慢性の下痢は改善し, 3か月で体重が18kg増加した. 十二指腸潰瘍に対する胃切除後の持続する下痢に対しては, 本症の存在を念頭におき, 早急な診断, 治療が必要である.
  • 牧野 洋知, 国崎 主税, 舛井 秀宣, 渡会 伸治, 嶋田 紘
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2664-2668
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で, 肝硬変の診断で他院にて加療中, 下血を認め, Hb 4.9g/dlの貧血を呈し精査目的で入院となった. 上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に静脈瘤を認めた. 低緊張性十二指腸造影検査では, 同部位に境界明瞭, 表面平滑な陰影欠損として描出された. 経皮経肝門脈造影で, 後下膵十二指腸静脈が主たる流入路, 精巣静脈が流出路で下大静脈とのシャントを認めたため, 後下膵十二指腸静脈に対し経皮経肝門脈塞栓術を施行した. いったん軽快退院となったが, 術後約2か月後に下血・貧血が再度認められたため, 再入院となった. 精巣静脈造影検査で, 十二指腸静脈瘤が残存していたため, 開腹下に静脈瘤を結紮切除後, 残存した静脈瘤内にエタノールアミンオレイトを注入し, 術中硬化療法を施行した. 術後2年経過した現在再発なく経過良好である.
    十二指腸静脈瘤に結紮術および術中硬化療法は安全かつ確実で有用な治療法であった.
  • 待本 貴文, 中村 肇, 坂井 義治, 岡崎 和一, 山岡 義生
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2669-2673
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵管狭細型慢性膵炎と診断し, ステロイド治療により改善した閉塞性黄疸の1例を経験した. 症例は37歳の男性. 特に誘因なく心窩部痛を訴え, 急性膵炎の診断にて入院. 血清アミラーゼは345IU/Lと上昇, 腹部CTでは膵はび慢性に腫大するも腫瘤, 主膵管拡張は認めなかった. 徐々に肝胆道系酵素が上昇, CTでも総胆管の拡張を認め, 落下結石に伴う膵炎, 胆管炎を疑ったが, ERCPにて総胆管結石は認めず, 下部胆管, 主膵管に平滑な狭窄を認めた. 膵管狭細型慢性膵炎を疑い, 自己免疫疾患との関連を検索, 抗Lactoferrin抗体が陽性であったため, プレドニン投与を開始, 2週間後, さらに6か月後のERCPにて下部胆管, 主膵管の狭窄は著明に改善した. 最近, 自己免疫の関与が考えられるステロイド治療が有効な膵管狭細型慢性膵炎という概念が注目されている. こういった病態を認識し, ステロイド投与による軽快の可能性を探ったうえで手術適応を検討すべきである.
  • 中居 卓也, 白石 治, 川辺 高史, 船井 貞往, 香山 仁志, 康 謙三, 安富 正幸
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2674-2678
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の女性. 発熱と腹痛を主訴に来院した. 前医で, 下部胆管癌に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が今永式 (I型再建法) で再建され, 術後繰り返す胆管炎と肝膿瘍に膿瘍ドレナージが行われていた. 血清ALPなどの胆道酵素や上部消化管造影検査では異常を認めず, 99mTc-PMT胆道シンチグラフィーからも胆管空腸の吻合部狭窄や胆汁うっ滞所見はなかった. 食事摂取で発熱などの胆管炎症状が現れ, 抗生剤動注療法も奏効しなかった. 胆管炎の原因が食物の胆道内への逆流と考えられ再開腹後, 再建法をI型からII型に変更した. 術後, 6か月経過した現在, 胆管炎の再燃は認めない.
  • 菅谷 義範, 齋木 浩士
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2679-2683
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸内視鏡検査 (colonoscopy, colonfiberscopy: 以下, CFと略す) により, 脾損傷を発症した1例を経験した. 症例は72歳の男性で, 腸閉塞により当院内科に入院した. 20年前に胃潰瘍にて幽門側胃切除術を受けている. 保存的治療で腸閉塞は改善したが, 入院前より便秘傾向であったため, 入院10日目に大腸内視鏡検査を行った. 大腸内視鏡の挿入はスムーズで, 大腸内にも異常は見られなかった.検査終了後4 時間経過した頃より左上腹部に疼痛が出現し圧痛も認められた. また, 血圧が低下しショック状態となった. 血液一般検査にても赤血球数の減少と, 血色素の低下が認められたので, 出血によるショックと考えられた. 腹部CT 検査を行ったところ脾損傷が認められたので, 緊急手術を行った. CF の合併症としての脾損傷は極めてまれであるが, 左上腹部痛や, ショック症状があった場合には, 脾損傷を念頭に置くべきである.
  • 佐々木 裕茂, 林 勝知, 鬼束 惇義
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2684-2688
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    われわれは最近, electrolyte depletion syndromeを呈し, 広範囲にm癌を伴った巨大な大腸絨毛腺腫を経験したので報告する.
    症例は55歳の男性で, 40歳代より頻回に下痢を認めていた. 今回も, 数日来の下痢, 嘔吐が続き当院を受診した. 入院時, 血圧70/40mmHg, 脈拍104/分, 血液検査にてNa 127mEq/l, K 3.1mEq/l, Cl72mEq/l, BUN85.1mg/dl と脱水によるショック, Na, K, Clの中等度の低下, 高BUN血症を認めた. 大腸内視鏡所見では, 歯状線より3cm口側の直腸からS状結腸にかけて絨毛腫瘍を認めた. 同腫瘍の生検では, 腺腫内に高分化腺癌を伴っていた. 腹会陰式直腸切断術を施行した. 摘出標本所見では, 直腸からS状結腸にかけて26×13cmの絨毛腫瘍を認めた. 病理組織学的所見では, 同腫瘍は絨毛腺腫で, 腺腫全体にm癌を伴っていた. n (-), P0, H0, M (-), stage 0であった. 術後4年の現在, 再発を認めていない.
  • 濱崎 達憲, 森 尚秀, 和田守 憲二, 岡 正朗
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2689-2693
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈症候群 (以下, SMASと略記) は急激な体重減少を契機として発症することが多く, 原則的には保存的治療が奏効する. われわれは, 直腸癌の腹会陰式直腸切断術後にSMASを発症し, 保存的治療が無効で手術を施行した症例を経験した. 術後に小腸が小骨盤腔に落ち込み強固に癒着して腸間膜根の過緊張をきたし, 上腸間膜動脈が十二指腸水平脚を圧迫したことが原因であった. これに対して十二指腸授動術を行い, いったんは軽快したがSMASは再発した. 再手術では十二指腸空腸側々吻合術を施行した. 術後8年経過した現在に至るまで腸閉塞は起こさず, 良好に経過している.SMASの手術適応は諸家によりさまざまであるが, 上部消化管造影と超音波検査とをあわせて腸間膜根部の可動性を適切に評価することが治療方針を決定する上で重要である. 手術術式は, 十二指腸空腸側々吻合術が, 手技的にも簡単で吻合口も十分にとれ治療効果も確実な方法として推奨される
  • 高橋 祐, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 塩見 正哉, 籾山 正人, 伊神 剛, 太平 周作, 雨宮 剛
    1999 年 32 巻 12 号 p. 2694-2698
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Gastrointestinal stromal tumor (GIST) は近年提唱された比較的新しい概念である. われわれは直腸原発GISTの1切除例を経験した. また, 過去10年間に当科で経験した直腸平滑筋肉腫4例に対し免疫染色を改めて施行し, すべてGISTであったという結果を得たので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例1は57歳の女性. 腹部膨満, 便秘, 排尿障害を主訴に受診し, 骨盤内腫瘍の診断で入院となった. 各種画像診断を施行後, 手術を施行した. 開腹にて腫瘍は直腸原発と判断し, 直腸切断術を施行した. 病理学的にはHE染色で紡錘状腫瘍細胞が索状に交錯し増殖していた. 各種免疫染色にてGIST, uncommitted type, malignantと診断した.
    現在はGISTという概念が浸透し始めている時期であり, 今後更なる検討が必要な疾患であると思われた.
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