日本消化器外科学会雑誌
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微小な無症候性グルカゴン産生腫瘍の1例
河野 世章中郡 聡夫丸山 通広浅野 武秀磯野 可一
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1999 年 32 巻 3 号 p. 875-878

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抄録
症例は59歳の女性で症状はなく, 腹部超音波検査で膵体部腫瘍を指摘された. Dynamic CTにて腫瘍はほぼ均一で良好にenhanceされ膵島細胞腫が疑われたが膵ホルモンの測定ではいずれも正常範囲内であった. 手術は腫瘍摘出術が行われた. 腫瘍は大きさ1×1×1cmで被膜を有し, 病理組織では腫瘍細胞が硝子様の結合組織の中に増生しており, 索状・リボン状の配列が認められた. 悪性所見はみられず膵島細胞腫瘍と考えられたが, 免疫組織染色によってグルカゴンの産生が証明され, 無症候性のグルカゴン産生腫瘍と診断された. 現在, 術後6年で無再発生存中である.
無症候性グルカゴン産生腫瘍 (以下, A群) と症状を示す症候性グルカゴン産生腫瘍 (以下, S群) とを臨床病理学的に比較検討したところ, 腫瘍径ではA群の方が小さくグルカゴン血中濃度ではA群の方が低かった. さらに, A群はS群に比べ良性の腫瘍が多く, 予後良好と考えられた.
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