抄録
まれな大腸癌尾状葉転移の2切除例を経験したので報告し, 本邦報告例8例と併せて特徴について考察した. 症例(1)は69歳の女性で, 下大静脈に浸潤する腫瘍に対して拡大左葉+全尾状葉+下大静脈合併切除を施行した. 後に残肝ほかに再発を認め, 術後13か月目の現在, 化学放射線治療中である. 症例(2)は56歳の男性で, Spiegel葉の病巣に対して尾状葉部分切除を施行した. 術後7か月目の現在, 再発を認めていない. これまでの報告例の10例の特徴として, まず, 病巣発見までの期間は平均37.8か月と長く, また, 腫瘍径は48.6mmと大きく, 尾状葉病変の診断は的確に行われていないと思われた. 5例に下大静脈合併切除が行われており, 全例に浸潤を認めた. 生存期間は中央値21.5か月と良好ではないが, 進行度を考え併せると積極的な切除で予後が延長していると考えられた. 再発形式は残肝再発が多く見られ, 通常の肝転移症例と大きな違いは認めなかった.