抄録
症例は49歳の女性. 主訴は嘔気, 心窩部痛. 入院翌日, 胃静脈瘤の破裂を来した. CTにて膵体尾部腫瘍による脾静脈閉塞が原因と判断し(多発肝転移有り), 緊急で噴門側胃切除術を施行. 膵腫瘍の生検でsolid and papillary epithelial neoplasmが強く疑われた. 後に膵体尾部切除, 脾摘による腫瘍縮小術を施行, 肝転移に対しては抗癌剤の動注療法で対処したが, 治療抵抗性であった. 術前より血中ガストリン値が高く, 肝転移巣の増大とともに血中濃度は上昇し, さらに高インスリン血症による低血糖発作が頻発した. 病理所見を再検討した結果, islet cell tumorと確定された. Ca blocker, Somatostatinanalogでは効果なくStreptozotocinの動注療法を開始したところホルモンデータは劇的に改善した. 重篤な副作用もなく, 臨床経過は良好である.