抄録
ソマトスタチノーマは非常にまれな疾患であるが, 血漿ソマトスタチンの測定や免疫組織化学検査によるソマトスタチン染色が可能となり, 近年報告例が増加してきた. 今回, 我々はソマトスタチノーマ症候群を呈したソマトスタチン産生膵管・島細胞癌の1例を経験したので報告する. 症例は62歳の女性. 嘔気, 背部痛, 下痢, 体重減少, を主訴として受診した. また, 胆石による胆嚢摘出術の既往を有した. 超音波およびCT検査で肝外側葉, 胃, 膵臓に囲まれた約7cm大の腫瘤像を認めた. 遠隔転移なく腫瘤は局所に限局していたため可及的切除を行った. 病理では膵管癌部と島細胞癌部を認める混合癌の像を呈し, 島細胞癌部は免疫組織化学検査でソマトスタチン染色陽性であった. 血漿ソマトスタチン値は術前46pg/mlより術後21pg/mlに低下し下痢症状は軽快した. 以上より, 膵ソマトスタチノーマと判断した.