1999 年 32 巻 8 号 p. 2058-2063
胸腔鏡下食道切除術では十分なリンパ節郭清は困難とされ, 通常開胸下手術と同等の根治性が得られるか評価は一定していない. そこで我々は当料で行っている小開胸併用胸腔鏡下食道切除術 (本術式) のリンパ節郭清程度を通常開胸症例と比較検討した. 本術式施行例のうち通常開胸移行例・非治癒切除例を除く39例を対象 (T群) とし, 通常開胸例は本術式導入以前の他臓器合併切除例を除く治癒切除53例 (C群) を用いた. 両群に手術死亡はなく, 合併症の頻度には差がなかった. 肉眼的進行度に差を認めたが, 組織学的進行度には差がなかった. 胸腔内操作時間はT群で有意に長かったが, 胸腔内出血量では差がなかった. リンパ節郭清個数・転移個数でも差がなく, 胸腔内に限っても差がなかった. 部位別にリンパ節郭清個数をみたが, 特に差がなく, 小開胸併用胸腔鏡下食道切除術はリンパ節郭清からみると, 通常開胸とほぼ同等の郭清が行え食道癌に対する根治術として用いることができる可能性が示唆された.