腹腔鏡下手術に必要な新しい器具と手技の開発を紹介するとともに, その問題点について言及した. 腹腔鏡下手術を癌症例に適応することに関しては, あらゆる角度から検討がなされてきたが, 実験的には, 使用される動物, 腫瘍細胞などの特殊性から決定的な結論は得られていないのが現状である. また臨床的な研究も, 腫瘍のstage, 生物学的特性なども報告により異なり, 分析が困難であるのが現状であり, 長期予後を論ずるには, あまりにも時期尚早の感がある.
しかし手術侵襲の面から否定する問題が見当たらないのであれば, 残る大きな問題は適応と手術手技に纏わる問題のみである. 腹腔鏡下手術は内視鏡的粘膜切除術と拡大手術の中間的手術と位置づけ, これで十分に根治が期待できる症例に適応を絞るとともに, また一方で外科医は腹腔鏡下腫瘍外科手術の基本手技に習熟する必要がある.