私が食道癌治療に約30年間幸運にも携わることが出来たので, その臨床・研究経験をふまえ21世紀への展望を述べた.
臨床面からは, (1) 2領域-3領域郭清の問題, 集学的治療の一環として行ってきたCDDP+PEP+VDS3者併用療法に対する臨床的評価と問題点と少量CDDPと5FUの持続投与を中心としたプロトコールの評価, (3) 表在癌, 特にm3からsm1の治療法の選択に関して, 今後の課題を提示した.
基礎的な立場からは, 食道癌における細胞周期を制御する因子としてcyclin D1, 癌浸潤・転移に関わる因子としてuPA蛋白とPAI-2蛋白の重要性に着目すると共に, 食道癌の遺伝子異常をスクリーニングする方法としてのcomparative genomic hybridization法 (CGH法), およびHUMARA法によるクローン解析の現状を示した. さらに新しい治療法として, 癌特異免疫療法の一環としてのワクチン療法, Antisense療法, および遺伝子導入によるアポトーシス誘導の3つのテーマをとおして基礎的研究の成果と今後の可能性について述べた.