日本消化器外科学会雑誌
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胃癌の腹膜播種性転移能に影響する因子の分子生物学的検討
井上 透八代 正和西村 重彦松岡 翼山下 好人山田 靖哉澤田 鉄二仲田 文造大平 雅一平川 弘聖
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2000 年 33 巻 4 号 p. 523-528

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抄録

胃癌腹膜播種転移の形成過程には, 癌細胞の胃壁深層への浸潤, 漿膜面からの剥離, 腹膜への接着・浸潤というステップが必要である. 今回, 腹膜播種転移の各ステップに関与する因子を, 教室で樹立されたスキルス胃癌由来の高腹膜播種転移株, 腹膜中皮細胞株, 腹膜線維芽細胞株を用い, 分子生物学的な観点からin vivo, in vitro で検討し, 以下の結論を得た. すなわち, 癌細胞の原発巣からの離脱には, MMP-1産生亢進やE-Cadherin発現低下が関与し, さらに腹腔内に遊離した癌細胞が腹膜に着床するには, 癌細胞の発現する接着分子CD44Hや, α2β1-, α3β1-integrinが関与していることが示された. また, 癌細胞により, 腹膜に線維芽細胞増生がおこり, この増生が癌細胞の浸潤能や中皮細胞形態に影響を及ぼし, 癌細胞の転移に有利に働いていることが示唆された.

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