日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
33 巻, 4 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
  • 三好 和也, 淵本 定儀, 大崎 俊英, 坂田 龍彦, 武田 功, 高橋 健治, 大川 尚臣, 村田 年弘, 田中 公章, 高倉 範尚
    2000 年 33 巻 4 号 p. 427-432
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃全摘術後に空腸pouchを用いた再建を行い, 機能評価を行った. 同時期の48例の胃全摘術症例について, pouch and Roux-en-Y法 (以下, PRY)(N=23), pouch and interposition法 (以下, PI)(N=12), またはpouchを用いない従来のRoux-en-Y法 (以下, RY)(N=13) で再建を行った. 各症例の自覚症状, 1回食餌摂取量, 体重の変化, 血液生化学的検査値の推移, および消化管しんちぐらむによるRI停滞率について検討した. PRY-PI群では, RY群に比べ, 術後12か月における1回食餌摂取量が有意にすぐれていた (p<0.05) が, PI群の中には食後の嘔気・嘔吐などの鬱滞症状を長く訴えRI停滞率の極めて延長する症例があった. 今回の, 術後12か月までの検討では, PRYの成績がもっとも安定し良好であった.
  • 特に粘膜下層浸潤胃癌について
    香川 佳寛, 吉田 和弘, 西本 直樹, 矢野 康生, 平井 敏弘, 峠 哲哉
    2000 年 33 巻 4 号 p. 433-439
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌における細胞周期調節因子の発現を検討した. まず, 胃癌の悪性度と相関するp27Kip1 (以下, p27と略記), p27により活性が抑制されるcyclin Eの発現を検討した後, sm胃癌についてp27, cyclinE, p53, p21WAF1 (以下, p21と略記) を検討し, りんぱ節転移の予測について考察した. 胃癌178例の検討では, 低分化, 進行した症例でp27低発現であった. また, りんぱ節転移陽性症例はcyclin E高発現で, さらにp27低発現かつcyclin E高発現症例ではより強い相関を認めた.
    予後に関して検討したが, p27, cyclin Eの発現の高低による有意な差は認められなかった.
    一方, sm胃癌69例の検討ではp27発現低下はりんぱ節転移とは関連せず, cyclin E, p21高発現が関連していた. p53はりんぱ節転移とは関連しなかった. 以上, 胃癌ではp27の発現低下は悪性度に関連する重要な因子であるが, りんぱ節転移に関しては, cyclin Eが関連する因子として考えられた.
  • ロジスティック回帰分析による多変量解析を用いた危険因子の検討
    望月 文朗, 藤井 雅志, 笠倉 雄一, 鈴木 哲郎, 金森 規朗, 東風 貢, 山形 基夫, 岩井 重富
    2000 年 33 巻 4 号 p. 440-447
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    早期胃癌術後再発の危険因子を明らかにする目的で, 再発症例M癌1例 (0.2%=1/455), SM癌23例 (4.1%=23/558) の計24例 (2.4%=24/1,013) について, 再発部位・再発までの期間について検討し, 年齢・性差・占居部位・肉眼分類・腫瘍径・手術々式・組織型・深達度・INF・脈管侵襲・りんぱ節転移・多発癌の有無について, 再発を認めなかった症例と比較した. その結果, χ2検定では腫瘍径・組織型・深達度・脈管侵襲・りんぱ節転移・多発癌の有無が, 多変量解析では組織型・深達度・りんぱ節転移・多発癌の有無において有意差を認めた. 再発形式は遠隔転移が最も多かった. SM癌に加えてりんぱ節転移陽性・未分化型・多発癌の危険因子のうち1項目でも有している症例は, 血行性転移を念頭に置いたfollow upが必要で, SM癌+2項目以上危険因子の例は, D2以上のりんぱ節郭清と術後補助化学療法が必要であると考えられた.
  • 平間 公昭, 森田 隆幸, 今 充
    2000 年 33 巻 4 号 p. 448-454
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸癌の組織学的多様性 (同一腫瘍内に複数の組織型が混在する所見) に着目して, その臨床的意義を検討し, urokinase-type plasminogen activator (uPA) との関連性を調査した. 75歳以下, mp以深, 根治度A, Bの大腸癌を対象として, 臨床病理学的諸因子との関係, 無再発5年生存率, 再発形式に与える影響について検討を加え, 当科手術症例ではuPAの免疫染色を施行した. 組織学的多様性陽性例は無再発5年生存率が不良であり, 再発形式では結腸癌で局所再発との関連が深かった. uPAと組織学的多様性との有意な相関は認められなかった. 大腸癌において, 組織学的多様性は, 生物学的悪性度を反映し予後を規定する重要な因子と思われた.
  • 菊池 光伸
    2000 年 33 巻 4 号 p. 455-461
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸, S状結腸切除術後の排便機能は, 吻合部の位置が低位になるほど不良であり, 1日排便回数は増加し, soilingを有する症例もある. 今回, 教室で切除術を施行した直腸, S状結腸癌術後1年以上経過した24例の頻便, soilingの発生機序をdefecographyから検討した. 術後のdefecographyでは, 肛門直腸角, 会陰下降度は良好に維持されたが, 1年後の便排泄率は, 排便回数との間に負の相関が認められた (p<0.05). Soiling (+) 群の排泄率は38±30%で, soiling (-) 群では66±35%であった. Videodefecographyでは, 吻合部の口側腸管内の不十分な内容排泄が全例に見られた. Soiling (+) 症例は, 洗腸療法により改善した. 直腸, S状結腸切除後の頻便には, 直腸の内容排泄能の低下, 特に吻合部口側腸管内の内容排泄能の低下が関与していると思われた.
  • 塚山 正市, 平野 誠, 村上 望, 宇野 雄祐, 野沢 寛, 吉野 裕司, 太田 尚宏, 橘川 弘勝, 増田 信二
    2000 年 33 巻 4 号 p. 462-466
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性で, 心窩部不快感を主訴に来院した. 上部消化管造影検査で病変はMtに存在し, 内視鏡検査で門歯より34cmの食道に潰瘍を有する分葉状の隆起性病変を認めた. 生検で中分化型扁平上皮癌と診断されたため, 手術を行った. 摘出標本の病理検査で腫瘍は粘膜下層に広く浸潤しており, わずかに筋層への浸潤を認め, 深達度はmp1であった. また, 重層扁平上皮の基底細胞に類似した細胞が大小の充実巣を形成し増殖しており, 一部に小型の腺腔形成や扁平上皮癌への分化を認め, 類基底細胞癌と診断された. 術後経過は良好であったが, 9か月後の肝転移のため死亡した. 本症例において癌の血管新生との関与が示唆されているPyNPaseを免疫染色したところ, 腫瘍の核と細胞質に一致して強く染まった. 腫瘍内PyNPaseは高度脈管侵襲や早期血行性転移をきたし, 予後不良の一要因であることが示唆された.
  • 櫻井 孝志, 河地 茂行, 山本 貴章, 井上 聡, 川原 英之
    2000 年 33 巻 4 号 p. 467-471
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃結腸瘻はまれな疾患であるが, 我々は60歳の男性に対し腹腔鏡下に根治術を施行した. これは我々が検索したかぎり初例報告である. 術式は腹腔鏡下瘻孔切離, 瘻孔大網充填術および結腸瘻孔単純器械縫合閉鎖術とした. 手術時間は4時間32分, 術中出血量は少量であった. 術中瘻孔部の確認には消化管内腔からの内視鏡らいとによるがいどが有用であった. 瘻孔の閉鎖方法は, 手技が容易なこと, 術後狭窄を生じにくいこと, 再発防止に抗潰瘍剤などの投与を必要としないことなどから大網充填術が有効であると思われた. 術後経過は良好であり, 現在まで抗潰瘍剤などの投与なしにて再発を認めていない. 術前検査にて局所の炎症所見に乏しい場合には, まず腹腔鏡手術を行ってみるべきと思われた.
  • 梶本 徹也, 田代 直, 成瀬 勝, 佐々木 寿彦, 小川 龍之介, 秋田 治之, 井上 好央, 青木 照明, 池上 雅博
    2000 年 33 巻 4 号 p. 472-476
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性. 下血を認めたため当院を受診した. 上部消化管内視鏡検査では, 十二指腸下行部の主乳頭対側に潰瘍をともなう粘膜下腫瘍が認められた. 腹部CTおよび低緊張性十二指腸造影X線検査において十二指腸下行部に腫瘤が指摘された. 超音波内視鏡検査では, この病変は十二指腸筋層から連続しており, 血管造影X線検査の所見も総合して十二指腸平滑筋肉腫と診断し, 手術を施行した. 腫瘍は十二指腸下行部から水平部にかけて管外性に発育しており, 腫瘍を含めた十二指腸部分切除術を行った. 切除標本上, 腫瘍は長径64mmで粘膜面に潰瘍形成がみられ, 内部は不均一で壊死による嚢胞性変化が認められた. 病理組織検査の結果, 平滑筋肉腫と診断された. 今回のように十二指腸の粘膜下腫瘍が認められた場合, 平滑筋肉腫を念頭においた種々の画像診断を行う必要があり, 特に超音波内視鏡検査が有用であると考えられた.
  • 中山 善文, 門脇 康二, 永田 直幹, 平野 芳昭, 伊藤 英明
    2000 年 33 巻 4 号 p. 477-481
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    陥凹型早期十二指腸癌は極めてまれな疾患である. 今回, 我々は透析患者に陥凹型早期十二指腸癌を合併した1例を経験したので報告する. 症例は56歳の男性. 昭和52年より慢性腎不全のため透析を導入していた. 平成9年胃腺腫をぽりぺくとみーし, その後, 平成10年2月の内視鏡検査で, 十二指腸下行脚のVater乳頭対側前壁寄りに6×4mmの軽度の隆起を伴う浅い陥凹性病変を認めた. 生検の結果, 高分化型腺癌であったため, 当科紹介. 入院後, 内視鏡的粘膜切除 (EMR) を試みたが成功せず. くりっぷによるまーきんぐを行った後, 十二指腸楔状切除術を施行した. 病理組織検査の結果, well differentiated adenocarcinomaでm, ly0, v0, n0, 切除断端に癌細胞は認められなかった. 本症例は, 本邦における陥凹型早期十二指腸癌の25例目で, 透析患者に発生した最初の報告である.
  • 渡邊 常太, 西崎 隆, 若杉 健三, 高橋 郁雄, 小野原 俊博, 石川 哲大, 松坂 俊光, 久米 一弘, 山本 一郎
    2000 年 33 巻 4 号 p. 482-486
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    我々はVater乳頭部癌と副乳頭かるちのいどが共存した症例を経験したので報告する. 症例は66歳の女性. 主訴は心窩部痛. 上部消化管内視鏡検査にてVater乳頭部に露出腫瘤型の隆起性病変を認め乳頭部癌と診断され, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術 (以下, PpPD) を施行した. 術後病理検査にてVater乳頭部に径12×10mmの腺癌と副乳頭に径4×4mmのかるちのいど腫瘍を認めた. りんぱ節転移はみられなかった. このためVater乳頭部癌に対してPpPDを行い, 術前診断されなかった副乳頭かるちのいどに関しても治癒切除を得た. 退院後2年6か月再発の徴候はみられていない. 我々の検索しえた範囲ではVater乳頭部癌と副乳頭かるちのいどが共存する症例はこれまでに報告なく, 極めて貴重な症例と考えられたので報告する.
  • 伊藤 博, 泉 良平, 廣澤 久史, 角谷 直孝, 福島 亘, 村岡 恵一, 寺田 逸郎, 山崎 徹, 広野 禎介, 齋藤 勝彦
    2000 年 33 巻 4 号 p. 487-491
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は24歳の男性. 主訴は右季肋部痛で, 血液検査ではCEAとAFPが高値を示した. 超音波では肝右葉前区域を占める腫瘍を認め, 内部には嚢胞様病変を多数認めた. CTでは径15cmの腫瘍のほとんどが早期より造影されたが, 一部に壊死を疑う造影不良な領域を認めた. 血管造影では, 腫瘍はhypervascularで動静脈瘻の形成を認め, CT門脈相では広範な陰影欠損領域内に取り込まれた門脈枝を認めた. 肝血管肉腫を疑い肝右葉切除術を施行した. 切除標本では充実性の腫瘍内に血液と粘液様物質の貯留した嚢胞があり変性壊死を伴っていた. 組織学的には短紡錘形異型細胞が増殖し, 拡張した胆管や門脈が介在し, 特定の構造分化を示さないが一部に硝子滴が認められ肝未分化肉腫と診断された. 免疫染色では神経や筋および血管系のまーかーは陰性でCD34のみが強陽性であった. 本疾患はまれであり, CT門脈相やCD34免疫染色が新しい診断方法になりうると考えられたので報告する.
  • 中崎 晴弘, 渡辺 正志, 長谷部 行健, 戸倉 夏木, 大城 充, 瀧田 渉, 三木 敏嗣, 瀬尾 章, 栗原 聰元, 小林 一雄
    2000 年 33 巻 4 号 p. 492-496
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性. 慢性肝炎で近医通院中, 採血で慢性骨髄性白血病が疑われ, 精査目的で当院入院となった. 入院時の超音波, CT検査で肝S3からS4にかけて40×35mm大およびS8に8mm大の腫瘤を認め, 血清AFPは1,757ng/mlと高値を示し肝細胞癌の診断で平成6年10月肝左葉切除およびS8の腫瘍にエタノール局注を施行した. 平成8年4月胸部X線, CTで両肺に多発性の転移巣を認め, 静脈リザーバーから化学療法を施行した. CDDP 20mgを1時間かけ, 5-FU 2,000mgを7日間持続投与し, 1週間休薬し繰り返した. 14クール施行したところで左肺の1.5cm大の1個を残し他の腫瘍陰影は消失した. さらに25クール施行したが縮小傾向を認めず, 平成10年6月左肺部分切除術を施行した. 術後再発の兆候なく外来通院中である.
    今回, われわれは肝細胞癌切除後両側多発肺転移に対して全身化学療法施行後, 肺切除しえた1例を経験したので報告した.
  • 鈴木 慶一, 高橋 伸, 相浦 浩一, 斉藤 淳一, 早津 成夫, 星本 相淳, 北島 政樹, 向井 万起男
    2000 年 33 巻 4 号 p. 497-501
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1982年1月から1998年6月までに切除した, 5例の膵腺扁平上皮癌について所見, 占居部位, 病期, 術式, 術後経過などについて検討した. 男女比は4: 1で年齢は43歳から78歳まで, 平均64歳であった. 占居部位は4例が膵体部, 1例が膵頭部であり, いずれもts3以上の大きさであった. 画像所見ではhypervascularityを1例のみ認め, 特異的所見とは考えられなかった. 手術は膵体部癌に対しては膵体尾部切除術および膵全摘術, 膵頭部癌に対しては膵頭十二指腸切除術を行った. 症例はいずれもstage IV以上であった. 4例は全て1年以内に死亡し, 平均生存期間は137日であった. 1例は15か月目に癌死した.
    膵腺扁平上皮癌は比較的まれな膵原発の悪性腫瘍であり予後不良とされている. 自験例もいずれも進行例で予後不良であり, 特異的症状にも乏しいため成績向上を期待するためには, 早期発見が肝要であると考えられた.
  • 大城 望史, 板本 敏行, 角舎 学行, 札場 保宏, 宮本 和明, 石川 哲大, 田中 一誠, 山本 泰次, 福原 敏行, 大城 久司
    2000 年 33 巻 4 号 p. 502-506
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    われわれは極めてまれな結腸原発のleiomyosarcomaの症例を経験し, 若干の知見を得たので報告する. 症例は59歳の男性. 主訴は心窩部痛. 精査にて横行結腸癌の胃壁浸潤と診断し, 手術を施行した. 術中所見では, 横行結腸原発の8×6×7.5cmの腫瘍が胃体部大彎に浸潤しており, 横行結腸周囲, 大網に腫大したリンパ節を多数認めた. 病理組織学的所見では, 腫瘍細胞は好酸性で豊富な胞体を特徴とし, 細胞異型が顕著であり, 構造的には胞巣状の増殖形式を示していた. また, 免疫染色では抗smooth muscle actin抗体に陽性であり, 結腸epithelioid leiomyosarcomaと診断した. 本症は外科的切除が第1選択と考えられるが, 結腸原発例は極めて予後不良である.
  • 野末 睦, 丸山 常彦, 今村 史人, 福江 眞隆, 神山 幸一
    2000 年 33 巻 4 号 p. 507-511
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    当科では医療の見直し, 標準化を目指してクリティカル・パス (以下, パスと略記) 導入を開始し, 1998年10月より幽門側胃切除術のパスを作成, 導入した. その影響をみるために, 1998年度幽門側胃切除術全27例のうちパス導入前 (4月~9月) の17例とパス導入後の10例とを対象に, 入院日数, 保険請求点数の比較を行った. パスの概要は, 外来手術前検査. 手術2日前入院. 術後1日目IVH1号開始. 6日目流動食開始. 7日目抜糸, 術後透視. 16日目退院. ほぼパス通りの入院経過をとった症例は約7割であった. 入院日数ではパス導入前が平均36日, 導入後27.3日, 中央値32日と25日で入院日数の短縮が達せられた. 保険請求点数ではパス導入前が平均165,800点, パス導入後では133,900点で, 有意差があった. さらに, 入院日数補正をすると, パス施行後では医療内容の統一化による請求点数のまとまりがみられた.
  • 国枝 克行, 鴻村 寿, 佐野 純, 山口 和也, 青木 信一郎, 北村 文近, 杉山 保幸, 佐治 重豊
    2000 年 33 巻 4 号 p. 512-516
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    【目的】分子生物学的側面より大腸癌肝転移高危険群の抽出を行った.【対象と結果】(1) 大腸癌48例における, RT-PCRによるMMP-9, uPA, TIMP遺伝子発現と肝転移との関連をみると, 転移群ではMMP-9とuPA発現率が有意に高率でった.(2) 異時性肝転移33例と非転移66例におけるPCNA, CD44, nm23, p53免疫染色による検討では, 転移群でPCNA-LIが有意に高く, CD44 (+), nm23 (-) が有意に多かった.(3) 肝転移65例, 無再発66例における検討では, 肝転移群でMVDが有意に高値で, VEGF染色性が有意に高かった.(4) 大腸癌52例でのCEAとCK-20を用いたRT-PCRによる癌細胞の検索では, 病期の進行とともに検出率が増加した. 遠隔転移 (-) 例でも16%(7/43) が陽性で, うち2例 (29%) に異時性肝転移が認められた.【結語】大腸癌肝転移にはMMP-9, uPA, TIMP, VEGF, MVD, PCNA, nm23, CD44などが関連しており, これらの検索がRT-PCRによる環流血中の癌細胞検出法とともに高危険群抽出に有用であると推察された.
  • 冨田 尚裕, 多田 正知, 関本 貢嗣, 大植 雅之, 大西 直, 森田 哲史, 池永 雅一, 三宅 泰裕, 松浦 成昭, 門田 守人
    2000 年 33 巻 4 号 p. 517-522
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌手術では直腸剥離操作時の側方向脈管離断に伴う癌細胞漏出の可能性があり, 側方リンパ節転移との関連等が推測されるが, その実際および臨床的意義は不明である. そこで近年単離された消化管上皮細胞特異的遺伝子マーカーGS04094を用いたRT-PCR法にて骨盤腔遊離癌細胞を検出し, 臨床病理学的因子との関連を検討した. 直腸癌14例の開腹時 (pre), 直腸剥離操作終了時 (post) の骨盤腔を生食100mlで洗浄, 細胞診と共にRNA抽出, GS04094のRT-PCR解析を行った結果, 陽性症例を5例 (pre (+), post (+): 4例, pre (-), post (+): 1例) 認めた. RT-PCR陽性と壁深達度, リンパ節転移, リンパ管侵襲 (v), およびpre (+) においては腫瘍の局在 (Ra) とに有意の相関を認めた. 直腸癌の術中洗浄液を用いたGS04094のRT-PCR解析により側方向への脈管離断による漏出癌細胞, また腹膜翻転部以上の癌においては漿膜表面への遊離癌細胞を高感度に検出できる可能性があり, 直腸癌の進展度評価, 術式決定における有用性が示唆された.
  • 井上 透, 八代 正和, 西村 重彦, 松岡 翼, 山下 好人, 山田 靖哉, 澤田 鉄二, 仲田 文造, 大平 雅一, 平川 弘聖
    2000 年 33 巻 4 号 p. 523-528
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌腹膜播種転移の形成過程には, 癌細胞の胃壁深層への浸潤, 漿膜面からの剥離, 腹膜への接着・浸潤というステップが必要である. 今回, 腹膜播種転移の各ステップに関与する因子を, 教室で樹立されたスキルス胃癌由来の高腹膜播種転移株, 腹膜中皮細胞株, 腹膜線維芽細胞株を用い, 分子生物学的な観点からin vivo, in vitro で検討し, 以下の結論を得た. すなわち, 癌細胞の原発巣からの離脱には, MMP-1産生亢進やE-Cadherin発現低下が関与し, さらに腹腔内に遊離した癌細胞が腹膜に着床するには, 癌細胞の発現する接着分子CD44Hや, α2β1-, α3β1-integrinが関与していることが示された. また, 癌細胞により, 腹膜に線維芽細胞増生がおこり, この増生が癌細胞の浸潤能や中皮細胞形態に影響を及ぼし, 癌細胞の転移に有利に働いていることが示唆された.
  • 田中 真二, 佐藤 浩一, 森 正樹, 杉町 圭蔵
    2000 年 33 巻 4 号 p. 529-532
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    癌転移には細胞接着の機能低下が重要な因子として関与する. 近年, 細胞接着の裏打ち分子βカテニンがWntシグナルにより細胞膜下から核内へ移行することが報告されている. 我々はヒト食道癌で特異的に発現する新規WntレセプターFzE3を同定し, そのcDNAをクローニングした. FzE3を食道癌培養細胞に導入すると癌抑制遺伝子APC産物とβカテニンの結合が増加し, βカテニンは細胞膜下から核内へ移行した. 一方, 膜貫通ドメインを欠損させたFzE3ΔCを遺伝子導入するとAPCとβカテニンの結合が阻害され, βカテニンの核内移行が抑制された. 我々が同定した新規癌特異的分子FzE3はβカテニン・シグナル伝達系に作用し, さらにその抑制分子は癌転移に対する遺伝子治療の新たな分子標的として応用できる可能性が示された.
  • 近藤 陽子, 有井 滋樹, 森 章, 今村 正之
    2000 年 33 巻 4 号 p. 533-536
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    大腸腺腫27例, 早期大腸癌46例, 進行大腸癌60例におけるvascular endotelial growth factor (VEGF) の発現動態をRT-PCR法, Northern blot hybridization法, 免疫組織学的染色法で検討した. 腫瘍の進展に伴いVEGF発現陽性症例は増加し, 微小血管密度も増加した. 進行大腸癌症例では, VEGF 遺伝子発現は肝転移やリンパ節転移と相関関係を有した. さらに, ヒト大腸癌細胞株にVEGF遺伝子導入を行い, 高VEGF産生株を樹立し, その増殖能, 転移能を検討した.
    高VEGF産生株は増殖能の亢進, 旺盛な血管新生能, 転移能を示した.
    臨床的検討より, VEGF遺伝子発現は大腸癌の発育進展および転移に密接に関係し, 実験的検討により, これらの事象を実証した.
  • 久永 倫聖, 中島 祥介, 長尾 美津男, 金廣 裕道, 青松 幸雄, 高 済峯, 山田 高嗣, 中野 博重
    2000 年 33 巻 4 号 p. 537-542
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    切除肝癌47例を対象としFas, FasLの発現, 血中sFas, sFasL濃度を検討し, 転移・予後との関連を評価した. 免疫染色によるFas, FasLの陽性例は各16, 19例であり, 両者の間には逆相関が認められた. 浸潤リンパ球の多くはFas, FasLを発現していた. Fas陽性例で有意にアポトーシスが多く, Fas陽性例は陰性例に比べ有意に再発率が低かった. またFasL陽性例では再発率が高い傾向にあった. 多変量解析ではFasは独立した再発予測因子であった. 血中sFasは健康人‹肝硬変患者›肝癌患者であり, sFasLは健康人=肝硬変患者>肝癌患者であったが, 肝癌におけるFas, FasL発現とは相関を認めなかった. 以上より, 肝癌はFas発現を減弱させFasL陽性浸潤リンパ球より逃れることで免疫機構から回避し, 転移能を獲得するものと考えられた. また, sFasは肝硬変ですでに上昇しており, 肝癌の発生にも関与している可能性が示唆された.
  • 林 衆治, 中尾 昭公
    2000 年 33 巻 4 号 p. 543-548
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    消化器癌治療上の大きな問題として, 肝転移が挙げられる. 本研究において, 我々は肝転移制御に対する遺伝子治療の有用性に関して検討した. アデノウイルスベクターを用いて, tissue plasminogen activator (tPA), interleukin 10 (IL10), I kappa beta (IKB) 遺伝子を腫瘍組織, 肝臓へ導入し肝転移抑制効果を検討するとともに, 抗癌剤との併用効果を検討した. その結果は, 1) tPA, IL10遺伝子を用いた腫瘍組織, 肝臓への遺伝子導入により, 肝転移が抑制されること, 2) IKB遺伝子とCDDPを併用した場合, 肝転移抑制に相乗効果を示すこと, が明らかとなった. 以上から, 肝転移制御のための, 腫瘍組織および肝臓に対する遺伝子治療は, 新しい治療手段として有用であると示唆された.
  • 澤田 鉄二, 寺岡 均, 西原 承浩, 須浪 毅, 八代 正和, 山下 好人, 山田 靖哉, 前田 清, 仲田 文造, 平川 弘聖
    2000 年 33 巻 4 号 p. 549-553
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵癌細胞を用い, 微小環境における宿主免疫応答に関わる接着分子であるICAM-1発現の意義および転移に関与する因子として注目されているTGF-β1に着目し, 肝転移形成能におよぼす影響について分子生物学的解析を行った. ヌードマウス肝転移モデルにおいて高転移能を有するSW1990ではICAM-1発現が低率で, 末梢血単核球の癌細胞に対する接着性, 細胞障害活性も低かった. TGF-β1処理にて膵癌細胞のICAM-1発現は抑制され, また浸潤能は亢進し, 肝転移能もSW1990, CAPAN-2で促進された. TGF-β1などの因子によるICAM-1発現低下は免疫担当細胞よりの回避から転移形成に深く関与し, ICAM-1遺伝子導入や抗TGF-β1抗体による転移抑制への応用の可能性が示唆された.
  • 江上 寛, 林 尚子, 栗崎 貴, 甲斐 幹男, 高井 英二, 多森 靖洋, 赤木 純児, 廣田 昌彦, 小川 道雄
    2000 年 33 巻 4 号 p. 554-559
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵臓癌の転移機構を明らかにする目的で, BOP誘導実験膵癌組織から樹立した高転移株 (PC-1・0) 培養上清中に存在する癌細胞解離因子 (DF) 分離精製し, その本態と膵癌の浸潤転移機構との関連について解析を行った. DFの精製を進め構成アミノ酸解析を行った結果, DFは新しいタイプのmetalloproteaseあるいはムチン様の構造をもつFc binding proteinであることが示唆された. 生物学的活性を解析した結果, DFには癌細胞コロニーを濃度依存的に解離し, 細胞運動能を増強させ, さらに, fibronectinに対する接着能を選択的に増強し, MATRIBGELに対する細胞浸潤能を増強する作用が存在した. 本研究の結果から, DFは膵臓癌の浸潤転移機構と密接に関連した生物学的特性を有する新しい因子であることが示唆された.
  • 伊木 勝道, 真嶋 敏光, 久保添 忠彦, 岩本 末治, 小沼 英史, 角田 司
    2000 年 33 巻 4 号 p. 560-563
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ヒト膵管癌の実験系であるハムスター膵発癌系において, その浸潤, 進展にマトリックス分解酵素 (matrix metalloproteinase, MMP) が重要な役割を果たしているとの我々の結果と今までの他の知見をもとに, MMP阻害剤を用いた膵発癌抑制効果を検討した. 方法としてハムスター短期膵発癌モデルにおいて, 膵管上皮の過形成が出現する時期より, 新たに合成されたMMP阻害剤OPB-3206を混餌投与した. 実験開始後96日目に屠殺し膵臓を摘出後, 病理組織学的検索および, ゼラチンザイモグラフィーによるMMP抑制効果を検討した. コントロール群に比しOPB-3206投与群での膵癌の発生個数の有意な減少がみられた. またゼラチンザイモグラフィーでOPB投与群におけるMMP-2の活性化抑制作用が確認された. 以上より, ハムスター膵癌においてOPB-3206は膵発癌を抑制する可能性が示唆された.
  • 丸林 誠二, 岡田 和郎, 福馬 寿幸, 大城 良雄, 田代 裕尊, 片山 幸治, 浅原 利正, 土肥 雪彦
    2000 年 33 巻 4 号 p. 564
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
  • 黒川 幸典, 西庄 勇, 高橋 祐
    2000 年 33 巻 4 号 p. 565-566
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
feedback
Top