抄録
症例は23歳の女性. 右下腹部痛, 発熱を主訴に当科受診. 典型的な急性虫垂炎の所見を呈していたため, 腹腔鏡下に虫垂切除術を施行した. 虫垂の病理診断はAcute on chronic appendicitisと報告された. しかし, 術後も微熱, 右下腹部痛, CRP高値の持続がみられ諸検査にてCrohn病と診断された.その後, 上行, 横行結腸の狭窄が高度となりイレウス症状も出現したため結腸右半切除を施行し, その切除標本において病理学的にCrohn病が確認された. 虫垂の病理所見を再検討したところ虫垂根部に裂溝に伴う限局性急性炎症像がみられ, その深層に巨細胞を伴う非乾酪性肉芽腫を認めたことから, Crohn病による急性化膿性炎症と最終診断された. 本症例のように急性虫垂炎の原因としてCrohn病によるものがありえるため, 鑑別診断の1つとして本症を念頭に置くべきであり, また虫垂切除後の発熱, 腹痛, 炎症反応の持続がみられた場合は早期に本症を疑った精査が重要である.