日本消化器外科学会雑誌
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多変量解析を用いた大腸癌の卵巣転移危険因子の検討
冨木 裕一鎌野 俊紀国井 康弘岡田 豪笠巻 伸二根上 直樹折田 創坂本 修一坂本 一博鶴丸 昌彦
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2002 年 35 巻 1 号 p. 11-17

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抄録

目的:大腸癌の卵巣転移の危険因子を検討し, 予防的卵巣切除術の意義について考察した. 対象と方法: 20年間に切除した女性大腸癌552例を対象とし, 卵巣転移の特徴, 卵巣切除の理由, 多変量解析による卵巣転移の危険因子および予後について検討した.結果:再発も含めた卵巣転移は26例 (4.7%) であった. 卵巣の形態異常が認められた38例中14例 (36.8%) に転移を認めた. 片側卵巣に転移を疑わせる所見がみられたために, 形態異常がみられない対側卵巣の切除を施行した1例 (8.3%) に転移を認めた. ロジスティック回帰分析による多変量解析により, 大腸癌の卵巣転移の危険因子は, 年齢 (p<0.0001), 卵巣の形態異常 (p=0.0164), 深達度 (se, a2, si, ai: p=0.0366) および腹膜転移の有無 (p=0.0004) で, それぞれのオッズ比は年齢0.9063, 形態異常4.5499, 深達度3.1641, 腹膜転移8.1080であった. 全卵巣転移例の5年生存率は29.1%であったが, 卵巣のみの転移例では67.5%であった. 遠隔転移を伴う例に5年生存は1例もなかった.考察:卵巣以外に腹膜転移などの遠隔転移を伴う例では, 卵巣切除はpalliativeにならざるをえないと考えられた. 一方, 遠隔転移がなく, 卵巣に形態異常がみられない場合, 卵巣転移の可能性は低く, 予防的卵巣切除の意義は乏しいと思われた.

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