2002 年 35 巻 1 号 p. 35-39
Parathyroid hormone related protein (PTHrP) およびG-CSF産生が直接癌細胞から証明された高Ca血症, 白血球増多症を呈した食道扁平上皮癌の1例を経験した. 症例は72歳の男性.UtからMtにかけ長径約6cmの2型の腫瘍を認めた. 術前検査ではWBC 12, 100/mm3と白血球増多を認めたが, イオン化カルシウムは1.21mmol/lと正常範囲内であった.食道亜全摘, リンパ節郭清, 胃管による胸骨後再建を行った. 術後WBCは一時正常化したが, 高Ca血症の出現と同時に再上昇した.血中PTHrPが306pmol/lと高値であったため大量輸液, フロセミド, エルシトニン, ビスフォスフォネート投与を行ったが, 術後88日目に死亡した.患者腫瘍の培養細胞上清よりPTHrPの産生が認められ, 免疫染色によりPTHrPおよびG-CSFが陽性に認められた.食道扁平上皮癌において直接癌細胞からPTHrP, G-CSFの産生が証明されたのは調べえた限り本症例が初めてであった.