2002 年 35 巻 1 号 p. 92-96
症例は82歳の男性.内視鏡的胆管造影で肝門部胆管癌と診断された.閉塞性化膿性胆管炎を合併し, 開腹ドレナージを施行した.術後8日目頻回の下痢を認め, Clostridium difficile (以下, C. difficileと略記) のtoxinAが検出されたためVancomycin (以下, VCMと略記) の経口投与を開始した.投与後4日目激しい腹痛と腹部膨満を認め, 腹部単純X線では麻痺性イレウスの像を呈した.イレウス管を挿入し経イレウス管的にVCMを投与した.翌日には症状が劇的に改善し, イレウス管挿入後6日目toxinAの陰性を確認してイレウス管を抜去した.C. difficile腸炎の治療にはVCMの経口投与が有効である.しかし, 炎症が激しく麻痺性のイレウスが呈している際には罹患部に十分届かない.その際には, 経イレウス管的VCM投与は非常に有効な手段である.