日本消化器外科学会雑誌
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患者からみた胃切除術後愁訴の検討
温存した迷走神経の機能と愁訴の関連について
高山 祐一大山 繁和太田 惠一朗山口 俊晴高橋 孝中島 聰總武藤 徹一郎
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2002 年 35 巻 11 号 p. 1639-1643

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抄録

アンケートを用いて胃切除術を受けた胃癌患者の愁訴を解析するとともに, 患者からみた術後愁訴の順位づけを行った. また, グルカゴン負荷試験を用いて温存された神経の機能評価を行い, 愁訴との関連を検討した. 対象はD2リンパ節郭清の幽門側胃切除術が施行された早期胃癌241例である. 神経非温存群の愁訴は, 放屁が最も多く (20.7%), ついで下痢であった (16.3%), 一方, 温存群では, 放屁 (22.0%), 下痢 (4.0%) であった. 順位づけした患者さんの最も気になる愁訴は, 非温存群で下痢, 温存群で放屁であった. グルカゴン負荷試験にて迷走神経後幹の機能評価を行うと, 注射後6分値での術前後のc-peptideの差では温存群1.12±0.265, 非温存群2.87±0.39と非温存群において有意に高値を示し, インスリン分泌調節機能が保たれていた. したがって, 神経の温存により下痢の発生が軽減されているものと推察された. 迷走神経の温存術式は標準的に行うべきとはされていないが, 患者の術後愁訴は軽減されることが明らかであり, 根治性が損なわれないことが明らかとなれば早期胃癌に対しての標準的手術手技となるものと考えられた.

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