2002 年 35 巻 12 号 p. 1783-1787
本邦でも生活の欧米化に伴い, Barrett食道およびBarrett食道癌が増加している. 患者は45歳の男性. 10年以上前より胃食道逆流症にて定期的に経過観察されていた. 今回上部消化管造影にて下部食道異常陰影を指摘され, 当科を受診. 精査にて15cm長のBarrett食道に発生した2型中分化腺癌と診断し, 開胸開腹胸部食道亜全摘を施行. 病理診断ではp (SM), pN0であった. 予後は良好で, 術後2年9月の現在無再発生存中である. 本症例のBarrett食道は極めて長く, 検索した限りでは腺癌発生例中, 本邦で最も広範囲であった. またp53変異が癌部および癌部近傍後壁側の非癌部において陽性であり, 同遺伝子変異がBarrett 食道および腺癌の発生に関与している可能性が示唆された. Barrett食道表在癌の切除成績は極めて良好なため, 早期発見を目的とした胃食道逆流症のサーベイランスが最も重要である.