日本消化器外科学会雑誌
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多中心性発生が疑われた悪性グルカゴノーマの1例
塩澤 邦久北川 裕久中村 慶史西村 元一藤村 隆萱原 正都清水 康一太田 哲生三輪 晃一野々村 昭孝
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2002 年 35 巻 12 号 p. 1788-1792

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抄録

49歳の男性. 1990年検診で高血糖を指摘されていた. 2000年4月頃より体重減少 (5kg/6か月) を認め, 近医受診したところ膵腫瘍を指摘され当科入院となった. 入院時, 耐糖能障害, 血中グルカゴン高値を認め, CT検査にて膵体尾部に複数個の腫瘍を, 血管造影では同部位に腫瘍濃染像を認めた. 以上より, グルカゴノーマを疑い膵体尾部切除を行った. 腫瘍は膵体尾部に3個 ((1) ~ (3)) 存在した. 病理所見では, 腫瘍周囲に脈管浸潤を認め悪性と診断した. 免疫染色では (1) はグルカゴン陽性, 膵ポリペプチド陽性, ほかの膵ホルモン陰性, (2) はグルカゴン弱陽性, 他の膵ホルモン陰性, (3) はグルカゴン強陽性, 他の膵ホルモン陰性であった. いずれの腫瘍もグルカゴンを産生していたがグルカゴン産生および膵ポリペプチド産生に差異がみられたため, 多中心性発生した悪性グルカゴノーマが疑われた. 術後経過は順調で, 血中グルカゴンも完全に正常化した.

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