日本消化器外科学会雑誌
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胃癌による幽門狭窄および甲状腺クリーゼを伴い末梢輸液中に発症したWernicke脳症の1例
蛭川 浩史遠藤 和彦後藤 伸之大矢 洋冨田 広今井 一博木村 愛彦畠山 勝義
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2002 年 35 巻 12 号 p. 1793-1797

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抄録

症例は51歳の女性. 甲状腺クリーゼの診断で入院. 抗甲状腺薬, βブロッカーの内服, ビタミン剤を含まない電解質輸液を開始した. 入院後12日目より注視方向性眼振を供った眩暈が出現. 入院後33日目のMRI, T2強調画像にて中脳水道周囲に高信号を呈する病変を認め, 血中ビタミンB1値の低下がありWernicke脳症と診断された. 上部消化管内視鏡検査では幽門狭窄を来した進行胃癌を認めた. ビタミンB1大量投与により眩暈は改善し幽門側胃切除術を施行し退院した. 自験例は甲状腺クリーゼによる代謝亢進と, 輸液によるグルコースの負荷によりビタミンB1の需要が亢進したにもかかわらず幽門狭窄により摂取量が減少したことに起因したと推察された. また眼振を伴った眩暈は同症を疑う初発症状として重要で適切かつ迅速な対処をすべきであると考えられた. 同様の症例の報告は本邦および海外報告例にも認められずきわめてまれな症例と考えられた.

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