症例は86歳の女性. 発熱と尿潜血を認め, 右下腹部に硬い腫瘤が触知された. 腹部造影CT, MRI検査にて, 回盲部から骨盤内にかけて径13cmの腫瘤を認め, 膀胱を圧排していた. 大腸内視鏡検査にて盲腸に隆起性病変を認め, 生検で高分化型腺癌と診断されたため手術を施行した. 腫瘍は膀胱に強く浸潤しており, 結腸右半切除, および膀胱部分切除を行った. 盲腸を主座とした12.0×11.5cmの2型の腫瘍であり, 盲腸の潰瘍底から膀胱に瘻孔を形成していた. 病理組織像は粘液癌で, 膀胱の筋層まで浸潤していたが, 瘻孔壁は炎症性肉芽により形成されており, 腫瘍細胞の浸潤は認められなかった. 膀胱瘻を形成する大腸癌は主にS状結腸癌ないしは直腸癌であり, 自験例のように盲腸癌での瘻孔形成はきわめてまれである. 膀胱壁が, 膨張性に発育した腫瘍の粘液塊に強く圧排されたため壊死に陥り, 盲腸膀胱瘻を形成したと考えられた.