抄録
はじめに: Dukes A大腸癌の術後発生形式や危険因子を明らかにし, 術後の最適なfollow-upについて検討した.対象と方法: 1965~1995年に当施設で切除した大腸癌2, 435例のうち, Dukes A大腸癌372例を対象とした.再発症例を臨床病理学的に検討し, 直腸癌からの再発症例については非再発症例と各背景因子を比較検討した上で, p<0.1の因子に関しては多変量解析を追加した.結果: Dukes A大腸癌372例のうち16例 (4.3%) に再発を認め, うち15例が直腸癌からの再発であり, その再発部位としては局所9例, 肺4例, 肝2例, 骨1例であった.大腸癌切除後2年以内の早期再発が11例, 2~5年の中期再発が5例であり, 早期再発例では局所が72.7% を占めていたが, 中期再発例になると血行性転移が80.0%を占めていた.非再発症例194例との各背景因子の比較検討では, 組織型 (分化型vs分化型以外, p=0.003) のみが有意差を認め, さらに3因子を用いた多変量解析でも組織型 (p=0.005) のみが有意差を認めた.考察: Dukes A結腸癌の術後follow-upはあまり重要とは言えないが, Dukes A直腸癌に対しては術後2年間は局所再発を, それ以降5年目までは血行性転移を念頭に置いてfollow-upすべきである.また, 組織型が分化型以外 (por, muc, scc) の直腸癌の場合には再発のリスクが高いため, たとえDukes Aであっても高度進行癌と同様の厳重なfollow-upが必要である.