日本消化器外科学会雑誌
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肝動脈リザーバーシステムの感染を契機として発症した閉塞性黄疸を伴う巨大肝仮性動脈瘤の1例
山本 秀和奈良 聡田中 義人肥田 候矢山本 栄司寺尾 隆太小西 靖彦武田 惇
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2003 年 36 巻 8 号 p. 1183-1188

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抄録

症例は67歳の男性. S状結腸癌および肝転移のためS状結腸切除, 2回の肝部分切除術を受けた後, 右大腿動脈よりリザーバーシステムを留置し, 持続化学療法を行っていたが, 体動により留置針が移動し, 薬液が皮下に少量漏れたことがきっかけでリザーバーが露出した. 感染兆候が認められなかったため露出したリザーバーのみ摘除したが, 3か月後残存カテーテル感染によるカテーテル先端部巨大肝仮性動脈瘤を形成した. インターベンション治療により, 流出血管である脾動脈の閉鎖には成功したが, 流入血管である腹腔動脈の閉鎖は不可能であった. 動脈瘤は急速に成長して閉塞性黄疸をきたし切迫破裂となったが, 手術的に左胃動脈分岐後の腹腔動脈を結紮することにより救命しえた. リザーバーシステム感染は重篤な合併症を引き起こす可能性があり, 感染予防および感染に対する適切な評価, 対処の重要性が示唆された. また, 治療としては流入血管遮断術が有効であった.

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