症例は79歳の女性. 口腔内アフタを主訴に入院し症状軽快したため退院. 1月後腹痛出現し腸閉塞にて入院. 保存的治療にていったん軽快したが, 再び症状増悪し開腹術を施行した. 回腸末端部に著明な腸管壁の肥厚と発赤を認め回盲部切除を施行した. 切除標本では回盲弁直上に巨大な打ち抜き状潰瘍とその近傍に3個の小潰瘍が認められた. 組織所見では漿膜下層におよぶ非特異性潰瘍であった. 口腔内アフタを認めさらにHLA B51が陽性であり腸管型ベーチェット病との鑑別が問題となったが, ベーチェット病に特有な眼症状, 皮膚症状などは出現していないことや, 単純性潰瘍でも3割にHLA B51陽性症例があることから単純性潰瘍と最終診断した. 単純性潰瘍は主として20~40歳代の若年男性に好発するとされているが, 高齢者であっても単純性潰瘍を鑑別診断として念頭に置き診断・治療する必要があると思われた.