日本消化器外科学会雑誌
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Yersinia enterocoliticaによる腸間膜リンパ節膿瘍の2例
吉川 朱実瀬戸 泰之林 香織田中 雄一李 力行花岡 農夫瀬戸 泰士鈴木 敏文赤羽 葉子小野 巌
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2003 年 36 巻 9 号 p. 1311-1315

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抄録

回盲部腸炎・腸間膜リンパ節炎からリンパ節膿瘍を生じ外科的処置を要した2例を連続して経験した. 症例1は70歳, 女性. 主訴は右下腹部痛と発熱. 慢性膵炎と糖尿病を合併していた. 症例2は73歳, 男性. 主訴は右下腹痛. 肝硬変 (HCV) と糖尿病, 高血圧を合併していた. いずれも基礎疾患を有する高齢者であり, 膿培養でYersinia enterocolitica (以下, Y. entと略記) が証明された. 同菌は, 幼小児の一過性の胃腸炎の起炎菌として知られるが, ときに成人で回盲部腸炎や腸間膜リンパ節炎を生じる. 一般に腸間膜リンパ節炎から膿瘍化に至ることはまれであるが, Y. ent感染症はときに敗血症や全身随所の膿瘍形成を生じ, 重症化の背景に菌の病原性と宿主要因の双方が関与するとされる. 腸間膜リンパ節炎から外科的処置を要する膿瘍形成に至る場合があり, 適切な抗生剤の使用と注意深い経過観察が必要であると考えられた.

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