日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
36 巻, 9 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 富田 凉一, 藤崎 滋, 丹正 勝久
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1243-1248
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的と方法: 早期胃癌の迷走神経・幽門輪温存幽門側胃切除後J型空腸嚢間置術18例 (A群) と幽門輪非温存・迷走神経温存幽門側胃切除後J 型空腸嚢間置術18例 (B群) の術後QOLと代用胃排出機能を, 迷走神経・幽門輪温存幽門側胃切除例18例を対照 (C群) に比較検討した. 結果: A, C群はB群より早期ダンピング症状や逆流性食道炎症状は少なく, 健康時の80%以上食事摂取可能例はA, B群がC群より有意に多く (それぞれ, p<0.0001, p=0.0023), 食後腹部膨満感はA群がB, C群より有意に少なかった (それぞれp=0.0012, p=0.0092). 代用胃内容残存率50%時間ではA, C群はB群より有意に短縮 (それぞれp=0.0005, p<0.0001), 120分後代用胃内容残存率ではA, C群はB群より有意に低率だった (それぞp=0.0020, p<0.0001). 考察: A群はB群より胃切除後障害が少なく, 貯留・排出機能は良好であった.
  • 鳥井 孝宏, 宮澤 光男, 小山 勇
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1249-1257
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的・方法: 大量肝切除後あるいは肝移植後の移植肝においては肝内の血流は急激に変化し, その血流により生じるずり応力の変化が術後経過の良否を左右する可能性がある. そこで, 回転式ラジアルフロー型バイオリアクター (RRFB) というずり応力を段階的に負荷できる装置で直接, 肝組織にずり応力を負荷し, ずり応力負荷変化による肝組織の肝特異的機能発現の変化, 肝構造の変化, 肝組織のアポトーシスの進行の変化を観察し, 肝組織のずり応力負荷に対する影響を評価した. 結果: 肝組織にRRFB で中等度の持続的ずり応力 (30RPM) を負荷した培養では, 肝特異的機能発現は長期維持され, 肝構造破壊も抑制される傾向にあった. しかし, ずり応力を負荷しない培養 (0RPM), あるいは過度のずり応力負荷 (120RPM) では, 肝組織の肝特異的機能発現は短期間で低下し, 肝組織構造も培養早期に破壊された. 肝組織培養における肝組織のアポトーシス進行においても, ずり応力を負荷しない (0RPM), あるいは高度のずり応力負荷培養 (120RPM) に比較し, 中等度の持続的ずり応力負荷 (30RPM) によって最もアポトーシスの進行が抑制された. 結語: 適度な持続的ずり応力負荷は, 肝組織の肝特異的機能発現を長期に維持し, 肝組織保護に働くことが示唆された.
  • 石榑 清, 竹田 伸, 金子 哲也, 井上 総一郎, 中尾 昭公
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1258-1263
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌による門脈浸潤閉塞が原因で生じた食道静脈瘤出血に対して, 門脈内expandable metallic stent (EMS) を用いたinterventional radiologyでの止血に成功したので報告する. 症例は65歳の男性. 1年前に切除不能肝門部胆管癌のため胆管ステントを留置されていたが, 今回下血と貧血を主訴に当科入院となった. 精査の結果, 下血の原因は胆管癌の門脈浸潤による門脈圧亢進症が原因でできた食道静脈瘤からの出血と診断された. 内視鏡的硬化療法を試みたが, その際に生じた出血の止血に難渋したため, 静脈瘤への血流低減と止血を目的に門脈閉塞部にEMSを留置した. その結果, 食道静脈瘤の消失と止血が確認されたが求肝性の血流は十分には得られなかった. EMS留置後, 患者は順調に回復し退院可能となった. 本症のように悪性門脈閉塞による肝前性門脈圧亢進症が原因で生じた消化管出血には, 門脈内EMSは低侵襲で効果的な治療法と考えられた.
  • 田部 周市, 宮崎 修吉, 大原 秀一, 菅原 浩, 宮田 剛, 里見 進
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1264-1268
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃切後残胃の胃石は報告されているが, 食道癌術後再建胃管に発生した胃石の報告はない.胸部食道癌術後再建胃管の胃石症例で, 出血性胃管潰瘍を合併した1例と, 胃管癌を合併した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例1は55歳の男性. 昭和63年食道癌にて手術を施行. 平成10年10月から時折心窩部痛, 黒色便あり, 同年12月30日貧血にて緊急入院となった. 内視鏡検査にて胃管内に胃石と潰瘍を認めた. 内視鏡下に胃石の破砕術を施行し, 潰瘍も治癒した. 症例2は56歳の男性.昭和60年食道癌にて手術を施行. 平成元年9月頃より胸部不快感が出現し, 同年11月30日食道透視にて胃石および幽門狭窄を認めた. 内視鏡検査にて胃管癌と診断, 平成2年3月開腹手術を施行するも癌性腹膜炎で切除不能であった. 2症例とも残存病変を伴っており, 胃管胃石では併存病変を念頭に置き治療を進めることが重要であると考えられる.
  • 肱岡 範, 平田 稔彦, 横溝 博, 藤田 博, 加古 博史, 山根 隆明, 福田 精二
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1269-1274
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    原発巣の直接浸潤は粘膜下層 (sm) に留まりながら胃壁内の著明な癌性リンパ管症を呈した胃癌の1例を経験したので報告する. 症例は70歳の女性. 胃内視鏡検査にて噴門部から体中部小彎に陥凹性病変を認め, 生検の結果Group Vであり加療目的にて当院に紹介された. 術前は表層拡大型早期胃癌と診断し胃全摘術を施行した. しかし, 病理組織診断では, 直接浸潤以外に固有筋層 (mp) から漿膜下層 (ss) までリンパ管侵襲による進展が認められ, 癌性リンパ管症を呈していた. 画像所見を再検討すると, X線検査にIIc面より広範囲に胃壁の浮腫状変化と思われる “しめ縄状” の粘膜ひだを認めた. これは, 癌細胞がリンパ管内で腫瘍塞栓を起こし, リンパのうっ滞が起こるために生ずるもので, 胃壁内に進展した癌性リンパ管症に特徴的であると考えられる.
  • 星野 誠一郎, 山内 靖, 山下 裕一, 久米 徹, 馬場 美樹, 酒井 憲見, 前川 隆文, 白日 高歩
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1275-1280
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の女性. 近医で施行された腹部超音波検査で肝右葉を中心に増大傾向を認める低エコーレベルの腫瘤を指摘された. 当院受診後最初に施行したMRI検査では血管腫を疑わせる所見であったが, 経過とともに増大を認めた. CT検査, 血管造影検査で確定診断が得られず生検検査を行い, 特殊免疫染色 (α-smooth muscle actin, muscle specific actin, vimentin) を含めた病理組織検査の結果平滑筋肉腫と診断した. 肝左葉の肥大を目的に門脈右枝と右肝動脈の塞栓術後, 拡大肝右葉切除術を行った. 腫瘍は被膜を有し紡錘形の腫瘍細胞と壊死組織が混在していた. 術前の消化管検査などから他の原発巣を認めず肝臓原発の平滑筋肉腫と診断した. 術後9か月目に肺転移をきたし右肺部分切除術を施行したが, その後約6か月再発の徴候なく経過観察中である. 肝臓原発の本疾患は本邦報告例では40例目であり文献的考察を含め報告した.
  • 日比野 茂, 藤岡 進, 加藤 健司, 待木 雄一, 朽名 靖, 竹之内 靖, 高良 大介, 松葉 秀基, 森前 博文, 吉田 カツ江
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1281-1286
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の女性. 食思不振を主訴に来院した. 腹部超音波にて右肝内胆管の拡張と, hyperechoicで境界不明瞭な不整形の腫瘤像が認められた. 腹部CTでは肝右葉にlow densityの腫瘤性病変が認められた. その末梢側の肝内胆管と, 右尾状葉の肝内胆管が拡張していた.門脈右枝近傍に結節状でlow densityの腫瘤性病変が認められた. 上腸間膜動脈造影門脈相では門脈は右本幹で狭細化しており, 前区域枝は造影されなかった. 内視鏡的逆行性胆管造影では左肝管がわずかに造影されるのみで右肝管は途絶していた.
    以上の所見より肝内胆管癌と診断し, 手術を施行した. 切除標本肉眼所見では右肝管より発育した腫瘍栓が総肝管に突出していた. 病理組織学的に中分化型腺癌であった. 本症例は肝右葉原発の肝内胆管癌で, 胆管内に発育進展したものと推測され, 肉眼分類は腫瘤形成型+胆管内発育型とした.
  • 中野 浩, Daniel Jaeck, Marie-Pierre Chenard-Neu, 守屋 仁布, 山村 卓也, 山口 晋
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1287-1292
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    Liver adenomatosis (LA) は, hepatic adenomaの多発として定義され, まれな疾患である. 今回, 腹腔内への破裂, 腹腔内出血をきたし, 緊急の肝切除術により救命しえたLAの1例を経験したので報告する. 症例は41歳のフランス人白人女性. 突然の心窩部痛とショック, 意識障害にて紹介入院となった. 既往として5年間の経口避妊薬内服歴があった. 腹部CT, MRにて, 多量の腹腔内出血, 多発性肝腫瘤と, 肝外側区域の破裂性腫瘤 (10×7×7cm) が認められた. 緊急開腹手術を施行し, 肝外側区域切除術により止血した. 文献的には, 腹腔内破裂と腹腔内出血をきたしたLAの報告は本例を含め10例である (腹腔内出血を伴わない腫瘍内出血を除く). 特徴として, 若年女性, 経口避妊薬の使用があげられ, また直径5cmを越える肝外側区域の腫瘤に腹腔内破裂の危険性がある.
  • 山中 秀高, 川崎 里奈子, 関 崇, 西垣 英治, 杉浦 友則, 京兼 隆典, 北川 喜己, 河野 弘, 松浦 豊, 佐竹 立成
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1293-1298
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胆嚢粘液性嚢胞腺腫はまれな疾患で, 本邦では論文2例, 会議録2例の報告をみるのみである. 今回, 分節型胆嚢腺筋腫症に併存した1例を経験したので本邦報告例と文献的考察を加え報告する. 症例は85歳の男性. 12年前, 腹痛にて胆嚢結石症と診断されていたが放置し, 今回再び腹痛にて入院した. 入院時, 発熱, 黄疸はなかったが, 右季肋下に圧痛を認めた. 腫瘤を触知しなかった. 血液検査で胆道系酵素の上昇を認めた. 腹部US, CTおよびMRCP検査で胆嚢内に多数の結石と, 胆嚢体部壁に小嚢胞の集簇した17×20mm大の腫瘤を認めた. 胆嚢結石症, 分節型胆嚢腺筋腫症, 胆嚢腫瘍と診断し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した. 術中, 胆嚢漿膜側は平滑で, リンパ節腫大を認めなかった. 体部壁の病理組織で腺筋腫と粘液性嚢胞腺腫の併存と確診された.
  • 星野 和男, 仲村 匡也, 鴨下 憲和, 池田 文広, 森下 靖雄, 柳澤 昭夫
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1299-1304
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    進行膵癌の予後は極めて悪く, 特に上腸間膜動脈に浸潤をきたした膵癌では根治手術は望めないとの考えが一般的である. 著者らは黄疸を主訴とする59歳の女性で, CEAとCA19-9がともに異常高値を示し, 上腸間膜動脈と門脈を腫瘍内に巻き込んだ腫瘤径5cm の高度進行膵癌 (Stage IVa) に対して, 両血管を合併切除再建する拡大膵頭十二指腸切除術を行った. 血管は, 門脈4cm, 上腸間膜動脈3cmをおのおの合併切除して端々吻合した. 消化管の再建は今永法で行った. 出血量は1,785mlであった. 術後経過は良好で, 下痢などの機能障害も軽度で, 術後40日目に退院できた. 術後2つの腫瘍マーカーの著明な低下が得られ, 術後4か月で術前と全く同様の社会復帰を果たし, 術後4年健存して術後5年4か月目に肺縦隔転移で癌死した. 解剖では温存膵や膵空腸吻合部を含めた膵周囲や後腹膜などの腹腔内には全く再発を認めず, 局所的には根治が得られていた極めてまれな症例を経験した.
  • 飯塚 亮二, 竹中 温, 庄野 泰規, 泉 浩, 藤井 宏二, 井川 理, 柿原 直樹, 松村 博臣, 土橋 洋史, 加藤 元一
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1305-1310
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    膵胆管合流異常を伴う十二指腸有茎性腫瘍の捻転により急性膵炎を繰り返した症例を経験したので報告する. 症例は72歳の男性. 平成7年腹痛を認め救急病院受診し急性膵炎と診断された. 上部消化管内視鏡を施行したところ十二指腸乳頭部の口側に有茎性腫瘍 (40×25mm) を認め腫瘍捻転により膵管開口部が閉塞し急性膵炎となっていた. 鉗子にて腫瘍の捻転を解除すると症状は消失した. 以上のような転帰により膵炎を繰り返したため, 平成12年に十二指腸を切開し腫瘍の摘出術を行った. 腫瘍の組織像および免疫組織学的検索によりparagangliomaと診断した.
  • 吉川 朱実, 瀬戸 泰之, 林 香織, 田中 雄一, 李 力行, 花岡 農夫, 瀬戸 泰士, 鈴木 敏文, 赤羽 葉子, 小野 巌
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1311-1315
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    回盲部腸炎・腸間膜リンパ節炎からリンパ節膿瘍を生じ外科的処置を要した2例を連続して経験した. 症例1は70歳, 女性. 主訴は右下腹部痛と発熱. 慢性膵炎と糖尿病を合併していた. 症例2は73歳, 男性. 主訴は右下腹痛. 肝硬変 (HCV) と糖尿病, 高血圧を合併していた. いずれも基礎疾患を有する高齢者であり, 膿培養でYersinia enterocolitica (以下, Y. entと略記) が証明された. 同菌は, 幼小児の一過性の胃腸炎の起炎菌として知られるが, ときに成人で回盲部腸炎や腸間膜リンパ節炎を生じる. 一般に腸間膜リンパ節炎から膿瘍化に至ることはまれであるが, Y. ent感染症はときに敗血症や全身随所の膿瘍形成を生じ, 重症化の背景に菌の病原性と宿主要因の双方が関与するとされる. 腸間膜リンパ節炎から外科的処置を要する膿瘍形成に至る場合があり, 適切な抗生剤の使用と注意深い経過観察が必要であると考えられた.
  • 佐瀬 善一郎, 星野 豊, 木暮 道彦, 根本 剛, 松山 真一, 郡司 崇志, 塚田 学, 添田 暢俊, 寺島 信也, 後藤 満一
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1316-1320
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    メッケル憩室炎が憩室間膜へ穿通, 後腹膜炎を呈し, 治療に難渋したまれな1例を経験したので報告する. 症例は高血圧, 糖尿病を有する69歳の男性で, 腹痛を主訴に入院した. 翌日に39℃の発熱, 右側腹部の筋性防御が出現, 画像上腹水と後腹膜の気腫を認めたため, 十二指腸潰瘍の後腹膜穿通を疑い緊急手術を施行した. 開腹するに十二指腸に穿通はなく, 回盲部より50cm口側に壊死に陥ったメッケル憩室を認め憩室間膜付着部から後腹膜へ穿通し気腫を認めた. メッケル憩室穿通による後腹膜炎と診断し憩室切除, ドレナージ術を施行した. 肉眼標本では憩室先端が壊死に陥っており, 憩室間膜側へ約5mm大の穿通を認めた. 組織所見では壊死の部分に残存粘膜や筋層が見られ, メッケル憩室炎であった. 術後は敗血症性ショック, 呼吸不全, 高血糖, 腸管麻痺などの併発により治療に難渋したが, 保存的に軽快し術後3か月で退院し, 退院後30か月の現在社会復帰を果たしている.
  • 須浪 毅, 金村 洙行, 大平 雅一, 楊 大鵬
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1321-1326
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の女性. 主訴は腹部膨満感. 腹部CT, 腹部USにて多量の腹水を認め, 精査目的にて入院となる. 腹水穿刺にて血性腹水を認め, 細胞診にてclass V (異型腺細胞を認める) であった. 腫瘍マーカーではCA125が高値であった. 精査にて上部・下部消化管, 卵巣, 子宮に異常を認めず. 微小卵巣癌による癌性腹膜炎あるいは腹膜原発漿液性乳頭状腺癌の術前診断にて開腹手術を施行した. 多量の血性腹水と腹膜・腸間膜に多数の小結節を認め, 大網は硬い腫瘍塊を形成していた. 卵巣は正常大であった. 大網および両側子宮付属器切除術を施行した. 腫瘍は大網の表面および内部に広範に認められ, 組織学的所見は卵巣漿液性乳頭状腺癌に酷似した所見を呈しているものの, 卵巣には表層に癌浸潤を認めるのみであった. 以上より, 腹膜原発漿液性乳頭状腺癌と診断された. 術後5か月後の現在も外来にてcarboplatin, paclitaxel併用による化学療法を施行中である.
  • 澤田 成彦, 梅本 淳, 稲山 治, 岡田 雅子, 清家 純一, 本田 純子, 沖津 奈都, 沖津 宏, 門田 康正
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1327-1331
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進を伴う消化管出血で胃食道以外から来たすことはまれである. 今回, 空腸静脈瘤破裂にて緊急手術に至った症例を経験したので報告する. 患者は59歳の男性で, 以前より肝硬変および肝癌にて治療中であった. 下血, ショックにて近医に受診し, 上部・下部消化器内視鏡を施行したが, 出血源を特定できず, 当院に搬送された. 出血シンチグラフィ, 血管造影を施行し, 上部小腸からの出血が疑われ, 緊急開腹手術を施行した. Treitz靭帯よりやや肛門側の空腸に静脈瘤が認められた. 胃を切開し, 挿入した内視鏡検査にて同部位に出血点を確認した. 静脈瘤を空腸壁外より縫合結紮した. 術後一時期肝不全に陥ったが, G. I療法, 血漿交換により救命し, その後は経過良好にて退院した.
  • 江上 拓哉, 中村 賢二, 籾井 真二, 田畑 正久
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1332-1335
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は81歳の女性. 2002年5月より貧血を指摘されており8月に大腸内視鏡検査にて巨大ポリープ状盲腸癌と診断された. 手術を施行したところ盲腸は正常であり, 虫垂が根部から腸重積様に盲腸内に反転陥入していた. 虫垂癌が発育過程で重積を生じ, 盲腸内に反転したものと考えD2郭清を伴う回盲部切除術を施行した. 病理組織学的には反転した虫垂の粘膜面に高分化型腺癌を認め一部粘液細胞癌を伴っていた. まれな進展形式を来した虫垂癌症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告した.
  • 水谷 聡, 塩谷 猛, 渋谷 哲男, 松本 光司, 藤井 博昭, 森山 雄吉
    2003 年 36 巻 9 号 p. 1336-1341
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    我々は直腸癌が肛門側壁内に転移し, 腟へ直接浸潤した症例を経験した. 症例は63歳の女性. 不正性器出血で婦人科受診し, 腟入口部に1.5cm大の隆起性病変を認めた. 諸検査後, 多発進行直腸癌 (上部直腸 (Ra), 肛門管 (P)) および子宮・腟直接浸潤, 肝転移 (H1) の診断で後方骨盤内臓全摘, 肝左葉切除術を施行した. 組織学的に主病巣 (Ra) は中分化型腺癌であった. 肛門管の副病変は高度のリンパ管侵襲を伴い, 発育形式が粘膜下・筋層を主とし, 構造・細胞異型が主病巣と類似していた. また, 遺伝子解析の結果から, リンパ管を経由した壁内転移であると診断した. 同病変が腟へ直接浸潤を来たしていた. 直腸癌における壁内転移はまれであり, 本症例のように壁内転移巣が主病巣から7cm離れ, さらに他臓器浸潤を呈する症例は報告されていない. 予後も不良であり, 今後さらに厳重な経過観察を必要とする.
feedback
Top