従来は肝切除不能とされた下大静脈浸潤, 閉塞の多包性肝エキノコックス症2例に対し, 下大静脈切除を伴う肝右3区域切除, および下大静脈周囲郭清と肝左葉切除 (減量手術) を行ったので報告する. 71歳の女性例は, 下大静脈への浸潤閉塞のため切除適応なしとされたが, second opinionを求めて当科入院. 肝右3区域切除に横隔膜・右副腎切除, 肝部下大静脈を合併切除した. 37歳の女性例は, 強固な浸潤が肝病巣から右心房外側と肝部下大静脈左縁に至り, 一部病巣を残して肝左葉切除を行った. おのおの2年8か月健在である. 当科では切除不能の本症は7年以内に全例が死亡したが, 病巣遺残があっても肝切除とアルベンダゾール投与で約半数が10年生存する. これらのような高度進行例にも積極的な肝切除と浸潤部分の切除を行い, 術後にアルベンダゾールを投与することで予後の改善が期待できる.