日本消化器外科学会雑誌
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食道癌術後早期経腸栄養における投与量増加の影響について
愛甲 聡吉住 豊松山 智一石塚 隆充津和野 伸一島内 正起杉浦 芳章前原 正明
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2004 年 37 巻 8 号 p. 1363-1371

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抄録
目的: 食道癌術後の標準的管理法としている早期経腸栄養 (EN) において, 投与量増加の影響について検討した.対象と方法: 99年までの術後静脈栄養 (PN) とENのrandomized controlled trial 登録例のうち, 術前無治療の症例をおのおのPN群 (9例), EN-1群 (11例) とした.EN-1群では1POD にENを500ml/日で開始し漸増して5POD以降1,500mlとした.その後の症例 (EN-2群: 11例) では術直後より開始して3POD以降1,500mlとし, 血漿輸血を極力控えた.3 群間で水分出納, 生化学検査値, 合併症の頻度を比較した.結果: EN-2 群では投与熱量が4POD まで多く, 血糖値は4PODで有意に高かったが許容範囲内であった.水分出納は, 2PODでEN-2群のみ正の値を示し他群と有意な差があった.FFP の周術期平均投与量は, EN-2群では2Uで他群に比べ有意に少なく, 術後早期の生化学的栄養指標値はEN-2群で低値を示した.total bilirubin値は, PN群に比べ, EN-1群は5POD 以降, EN-2群は2PODより有意に低値を示した.合併症発生率に差はなかったが, 排便回数の多い症例がEN-2群にみられた.考察: 早期ENの増量は水分動態を安定化し, 血漿輸血を用いない術後管理に有用である可能性があった.高ビリルビン血症抑制効果はENの投与量増加でより強調された.早期大量EN は, 安全に施行可能だが, 厳重な観察下の投与と年齢や体表面積による補正も必要と考えた.
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