日本消化器外科学会雑誌
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術後再発を契機に高アミラーゼ血症を認めた食道癌の1例
菅沼 利行長谷 和生識名 敦青笹 季文宇都宮 勝之藤野 啓一岡田 和滋津田 倫樹猛尾 弘照
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2004 年 37 巻 8 号 p. 1372-1377

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抄録
術後再発を契機に高アミラーゼ血症を伴い, 免疫組織学的検査にて再発部位での腫瘍細胞のアミラーゼ産生を認めた食道癌の1例を経験した.症例は49 歳の男性で, 嚥下困難と心窩部痛を主訴に来院した.精査の結果, 下部食道領域の低分化扁平上皮癌と診断し, 術前化学療法施行後, 右開胸開腹胸部食道全摘を行った.術後3か月目に右鎖骨上リンパ節転移を認めたため, 右鎖骨上リンパ節郭清を行った.術後8か月目に多発肝転移と血清アミラーゼ値が1,447U/Lと上昇を認め, 分画では唾液腺由来が優位であった.以後, 血清アミラーゼ値はさらに上昇し, 全身化学療法を行うも, 肝不全のため死亡した.抗α-amylase抗体を用いた免疫組織学的検索では, 原発巣は陰性であったが, 転移右鎖骨上リンパ節内の腫瘍細胞の胞体が明瞭に染色され, 食道癌によるアミラーゼ産生が示唆された.アミラーゼ産生食道癌の報告は過去になく, 最初の症例であると考えられた.
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