日本消化器外科学会雑誌
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家族性高コレステロール血症・ヘテロタイプの父親をドナーとして生体肝移植を行った同ホモタイプの1例
白幡 康弘川岸 直樹関口 悟大河内 信弘里見 進
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2005 年 38 巻 1 号 p. 57-62

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抄録
家族性高コレステロール血症・ホモタイプは約100万人に1人の遺伝的疾患であり, 生後より高度な高コレステロール血症を生じ, 四肢関節部の皮膚黄色腫が特徴的である. 幼少より重度の動脈硬化性病変をもたらし, 20歳未満にて心筋梗塞などが発症し, 致死的となる. この疾患に対して肝移植は効果的治療法であり, 欧米においては脳死ドナーからの肝移植が行われ, 効果を得ている. 今回, 我々はヘテロタイプの父親をドナーとする家族性高コレステロール血症・ホモタイプの2歳5か月の男児に対する生体肝移植を経験した. 術前血清コレステロール値は800mg/dlを超えていた. 肝移植後, 高脂血症薬の併用も行い, コレステロール値は250-300mg/dlまで低下させることが出来, 有効な治療効果を得ることが出来た. 現在, 移植後43か月を経過し, 食事制限も行わず, 問題なく成長している. 本疾患ホモタイプに対して, ヘテロタイプをドナーとして生体肝移植を行うことは, 生体肝移植の機会を増やし, 予後の改善に寄与すると考えられる.
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