日本消化器外科学会雑誌
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術後にBinswanger病を発症した宿便性直腸穿孔の1例
境 雄大八木橋 信夫原田 治大澤 忠治
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2005 年 38 巻 11 号 p. 1767-1772

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抄録

症例は75歳の男性で, 1週間の便秘と腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.左下腹部に軽度の腹膜刺激症状を認めた.腹部造影CTにてS状結腸から直腸に多量の糞便の貯留を認めたが, 穿孔所見なく経過観察とした.翌日, 炎症反応著増, 腹部造影CTにて直腸壁外への糞便の漏出を認め, 宿便性大腸穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹術を施行した.上部直腸に4.0cmの穿孔, 腸間膜内への糞便漏出を認め, Hartmann手術を施行した.術後に多臓器不全, 創感染, 腹腔内感染を来したが改善した.中枢神経症状が持続し, 臨床症状, 頭部CTにてBinswanger病の診断を得た.臨床症状が安定したため, 術後80日目に近医へ転院した.痴呆症状を有する高齢者では自覚症状が乏しいことがあり, 便秘を伴う突然の腹痛では宿便性大腸穿孔も念頭におき早期診断・早期治療を行うことが肝要である.

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