日本消化器外科学会雑誌
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定型的幽門側胃切除術と比較した幽門保存胃切除術の予後およびQOLの評価
野村 尚福島 紀雅高須 直樹飯澤 肇渋間 久池田 栄一
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2005 年 38 巻 12 号 p. 1785-1794

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抄録

はじめに: 中下部胃癌に対してはD2郭清を伴う幽門側胃切除術 (distal gastrectomy; 以下, DG) が標準術式として確立しているが, 早期癌には縮小手術も行われている. その一つに幽門保存胃切除術 (pyrolus preserving gastrectomy;以下, PPG) があり, 当院でも採用してきたが, その評価は定まっていない. アンケートによるquality of life (以下, QOL) の調査や内視鏡検査所見を用いてPPGの評価を行った. 対象および方法: PPGを施行した胃癌71例 (PPG群) を対象とした. 予後, 術後合併症, 愁訴に対するアンケート調査, 残胃内視鏡所見について, DGが行われた症例 (DG群) を対照に用いて検討した. 結果: 5生率には差がなかった. 術後早期の残胃内食物停滞はPPG群14.1%, DG群3.4%でPPG群に多かった. アンケート調査の結果, 逆流があると答えた人がPPG群13.4%, DG群38.0%, 早期ダンピング症状はPPG群36.2%, DG群60.5%で, これらはPPG群で少なかった. 内視鏡所見はPPG群の69.2%に食物残渣を認め, DG群の32.5%より高頻度であった. 残胃炎はPPG群33.3%, DG群68.3%, 残胃内胆汁逆流はPPG群5.1%, DG群22.0%とPPG群に少なかった. 考察: PPGはダンピング症状や胆汁の逆流, それによる残胃炎が少ないが残胃内の食物残渣が多かった. しかし, アンケート調査では残渣に起因する症状に差はなく, PPGを行うことでQOLの向上が望めると考えられた.

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