日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
直腸癌との鑑別が困難であった前立腺癌直腸転移の1例
木内 誠椎葉 健一佐藤 学金子 直征土井 孝志黒田 房邦小林 信之
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 38 巻 12 号 p. 1844-1849

詳細
抄録

症例は75歳の男性で, 1996年に前立腺癌に対し前立腺全摘術を施行された. 排便困難を主訴に精査加療目的で当科紹介された. 血液検査では前立腺特異抗原 (以下, PSAと略記) が42.5ng/mlに上昇しているのみであった. 大腸内視鏡検査では肛門縁から約7cmに2型の腫瘍を認め, 生検の結果は低分化腺癌であった. CTおよびMRIでは直腸の壁肥厚と, この部位とは離れた左尿管開口部付近に約1.4cm大の腫瘍を認めた. 以上より, 前立腺癌の局所再発とRs直腸癌の合併例と診断し腹会陰式直腸切断術を施行した. 病理所見では漿膜側から粘膜下層にかけて低分化腺癌の浸潤増殖を認めたが, 粘膜層には一部にしか腫瘍細胞を認めず, 免疫染色ではPSA染色陽性であったため前立腺癌の直腸転移と診断した. 術後は抗アンドロジェン作用薬を経口投与している. 直腸癌との鑑別が困難であった前立腺癌の1 例を呈示し, この病態につき若干の文献的考察を加えて報告する.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事
feedback
Top