抄録
症例は78歳の男性で, 左上腹痛, 下痢を主訴に当院に緊急入院した. 左上腹部に圧痛を伴い, 可動性のある手拳大の腫瘤を触知し, 腹部CT, 注腸造影X線検査にて完全翻転した虫垂を先進部とする腸重積症と診断した. ガストログラフィンを用いた注腸整復では, 横行結腸脾曲部の重積を横行結腸中央部までしか解除できず, 緊急手術を施行した. 手術所見は, 盲腸から上行結腸の後腹膜への固定不良と, 回盲部を先進部とし左側横行結腸まで達する腸重積症であった. 手術は結腸右半切除術を施行した. 切除標本では, 重積の先進部に腫瘍性病変は認めず, 虫垂のみが盲腸内に完全に翻転していた. 術後経過は良好で, 術後11日目に退院した. 自験例は, 右結腸の固定不良と完全型虫垂重積が回盲部結腸型の腸重積症を誘発したと推察された.