抄録
肝炎ウイルス関与を否定しえた自己免疫性肝炎(AIH)に合併した肝細胞癌(HCC)の2切除例を報告する. 症例1は36歳の女性で, AIHに対し, 23年間のプレドニゾロン(PSL)内服治療中, HCCを指摘され, 肝切除術を施行した. 腫瘍は径4.8cmで, 高分化型HCCの内部に中~低分化のHCCを認めた. 背景肝は慢性肝炎で, 血中のHBV-DNA, HCV-RNAともに陰性であった. 症例2は68歳の女性で, AIHに対して20年間のPSL内服治療中, HCCを指摘され, 肝切除術を施行した. 腫瘍は径2.5cmで, 中分化型HCCであった. 背景肝は慢性肝炎で, 血中, 肝組織中のHBV-DNA, HCV-RNAともに陰性であった. AIHにおけるHCCの発生機序としては, AIHの肝硬変への進行, ステロイドの長期投与, ウイルス性肝炎の合併などが想定されており, これらを詳細に検討する必要がある. 2症例とも背景肝は慢性肝炎であり, AIHに対して長期間PSL内服治療を受けていた. HBV, HCVの関与は少ないと考えられた.