抄録
はじめに: Surgical Site Infection(以下, SSI)発症の原因として術中の細菌汚染に着目し汚染源, 感染ルートを検討した. 対象/方法: 2004年9月~2006年1月までの待機手術104例(上部消化器20例, 大腸84例)を対象とした. 術中, 1) 開腹直後の洗浄水, 2) 閉腹直前の洗浄水(閉腹水), 3) 腹腔内洗浄後の手指, 4) 腹膜縫合後の切断糸, 5) 腹膜縫合後の手指, 6) 縫合前の皮下組織(皮下), 7) ドレープから検体を採取し菌種の培養同定を行った. SSIは術後30日以内の縫合不全を除く手術部位感染と定義した. 結果: SSIは全例, 腹壁表層感染で発生率は上部消化器手術で0% に対し大腸手術では27%だった. 人工肛門作成と術中の細菌検出がSSI発生の独立した危険因子であった(RR: 7.78, 5.02). 術中細菌検出率は大腸手術中56%で, 機械的・化学的腸管処置は細菌検出率の低下に関与しなかった. 術中細菌検出率は閉腹水と皮下でSSI発生例中61%, 52%と非発生例に対し有意に高く, 特に閉腹水の細菌検出がSSI発生の有意な独立危険因子だった(RR: 4.88). 考察: SSI発生は術中細菌汚染が主要因の一つであり, 特に残存腹腔内洗浄水と皮下の細菌汚染が深く関連していると考えられた. SSIの低減には, 徹底した術中細菌汚染のコントロールが再考されるべきであると考えられた.