抄録
異時性に大腿ヘルニアおよび閉鎖孔ヘルニア嵌頓を発症した高齢男性の1症例を経験したので報告する. 症例は76歳の男性で, 腸閉塞の診断で近医より紹介された. 右大腿ヘルニアの嵌頓の診断で同日緊急手術を施行した. 術後経過は良好で第4病日に退院したが, 2か月後腸閉塞を再発し救急外来を受診. 腹部CTで左恥骨筋と外閉鎖筋との間に径4cm大の腸管の嵌頓と思われる所見を認め, 左閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断, 同日緊急手術を施行した. 回盲弁から約40cm口側の回腸が左閉鎖孔に嵌頓していたが, 用手的に抜去可能で, 壊死所見がなく閉鎖孔の補強のみで手術を終了し第11病日に軽快退院した. 高齢の腸閉塞患者では, 鑑別診断に常にヘルニア嵌頓を入れ, スクリーニングとして腹部から鼡径部のCTを施行するべきと考えられた. 以上の症例に対し文献的考察を加え報告する.