2008 年 41 巻 12 号 p. 2029-2034
真性多血症患者の手術では周術期の管理が重要である. 今回, 我々は十二指腸潰瘍穿孔で緊急手術を施行した1例を経験したので報告する. 症例は56歳の男性で, 25歳時, 真性多血症と診断され加療を受けていたが, 36歳時に自己中止した. 50歳と55歳時, 脳梗塞で入院した. 今回, 食後の腹痛で入院した. 腹部CTおよび上部消化管内視鏡検査で十二指腸潰瘍穿孔, 腹膜炎と診断し緊急で大網充填術を施行した. 術後, 血栓塞栓症や出血傾向はなかったがacute respiratory distress syndrome (以下, ARDS) を併発した. 人工呼吸器管理, シベレスタットナトリウム投与などによる集学的治療にて軽快し術後24日目に退院した. 真性多血症患者の周術期管理には, 血栓塞栓症や出血に対する治療と同様に, 好中球の恒常的な活性化によるエラスターゼ放出の増加があり, ARDS準備状態にあるということを念頭におき, 肺合併症に留意した呼吸器管理, 治療も肝要と思われた.