日本消化器外科学会雑誌
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特発性上腸間膜動脈解離による重度の腸管虚血に対し右胃大網動脈を用いた空腸動脈再建が有効であった1例
内山 秀昭久米 正純松浦 弘福田 篤志岡留 健一郎前原 喜彦
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2008 年 41 巻 12 号 p. 2064-2068

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抄録

症例は42歳の男性で, 食後の激しい腹痛を主訴とし, 造影CTにて上腸間膜動脈起始部より約3cmの部分からその動脈解離が認められ, 上腸間膜動脈解離, 腸管虚血の診断で加療目的に当院搬送となった. 開腹時の所見では小腸は壊死には陥っていなかったが, 色調が悪く腸管血流は極めて不良であった. 上腸間膜動脈起始部より約3cmの部位から上腸間膜動脈の分枝におよぶ広い範囲で解離が確認された. 解離の進行による腸管壊死が危ぐされたが, 上腸間膜動脈分枝すべてを血行再建することは不能で, 全小腸壊死を回避する目的で右胃大網動脈と第4空腸動脈を吻合した. この空腸動脈再建により, 辺縁動脈を介して全腸管の血流は良好となった. 術後は抗凝固療法を行い, 食後腹痛なく順調に経過した. 特発性上腸間膜動脈解離による激しい食後腹痛に対し右胃大網動脈を用いた空腸動脈再建が有効であった1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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