日本衛生学雑誌
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塩化メチル水銀の免疫能に及ぼす影響
藤田 紘一郎月舘 説子菊池 正一二島 太一郎野牛 弘
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1976 年 31 巻 2 号 p. 353-360

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抄録
塩化メチル水銀の免疫能に及ぼす影響をdd系雄性マウス(体重20±2g)を使用して観察した。1群10匹のマウスに種々の濃度の塩化メチル水銀を1回または数回経口投与し,羊血球を抗原としてメチル水銀投与との時期的関係を考慮しながら免疫した。免疫後経時的に採血し,又摘脾を行ない,血清の血球凝集素価,溶血素価を,脾臓中の抗体産生細胞数を各々測定して次のような結果を得た。
1. 比較的低濃度の塩化メチル水銀を急性あるいは亜急性に投与されたマウスの抗体産生能にはほとんど変化が見出されなかった。
2. しかし比較的多量で体重減少や神経症状が発現する直前のメチル水銀濃度でマウスの抗体産生能が影響されることが判明した。
3. その場合,メチル水銀投与と抗原刺激の時期的関係によりメチル水銀が抗体産生に促進的に働いたり,逆に抑制的に作用したりする傾向があることがわかった。すなわち,抗原刺激前にメチル水銀が投与されると免疫反応の初期に抑制がみられ,抗原刺激後にメチル水銀が投与されると免疫反応の中期から後期にかけて促進がみられた。
4. メチル水銀は血清中のγ-グロブリンに直接作用する可能性は少なく,むしろ脾細胞中での免疫応答過程に作用するものと思われる。なおcAMPを介しての作用の可能性について考察した。
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