日本衛生学雑誌
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ヒトの気候順応能に関する研究 第4報
日本の気候下に於ける一般市民日本人と白人の血清の基礎代謝の季節変動
陳 澄雄
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1976 年 31 巻 3 号 p. 404-416

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抄録

日本人には基礎代謝の季節変動がみとめられているが,白人ではこれがみられないとの説もある。当教室の吉田は日本の気候下における白人と日本人の基礎代謝季節変動について,佐世保に駐留する海上自衛隊員と米海軍海兵隊員を対象として比較実験を行ない,両対象群ともその基礎代謝に季節変動のある事を確認し,既に当誌に発表した。
しかしこれは集団生活で,戸外活動の激しい軍隊という特殊な条件下での場合であったので,今回我々は長崎に在住し食生活,生活様式の点で日本の市民に近いと考えられる白人を対象として,この点を追求する実験を行なった。白人被験者は長崎に在住する教員,神父であって,その日本在留期間は3年以上の5名と1年未満の5名計10名だった。そして対象群の日本人群は長崎出身の当教室員や医学部学生計10名だった。実験期間は1972年7月より1年間に亘り行なった。
本実験の成績から以下の事が結論される。
1) 西日本(長崎市)の気候下では白人にも,その基礎代謝に季節変動がある。両群とも外気温,室温と極めて強い相関性を示し,共に冬高夏低一峰性を呈した。
2) 日本滞在期間の短い(1年未満)白人では長い者(3年以上)に比べて,その基礎代謝の向寒期の上昇がより速かで大きい傾向があり,気候への反応が激しい事がうかがわれる。
3) 呼吸商は年間平均日本人0.816,白人0.826で両群に差はない。また白人でも日本滞在期間の長い者の呼吸商は短い者のそれより高い傾向がある。これは日本に移住した白人被験者達の食生活が,なかでも脂肪摂取において日本人とほとんど相異のないことを示唆している。

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