日本衛生学雑誌
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ヒトの気候順応能に関する研究第5報
日本に居住する一般職種の日本人と白人の血清蛋白結合ヨードの季節変動
槌本 六良
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1976 年 31 巻 3 号 p. 417-432

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抄録

長崎市に在住する一般職業人の白人10名と日本人(教室員)10名について,1972年6月から1973年7月まで毎月1回血清蛋白結合ヨードの測定をした。その結果は次の如くであった。
1) 長崎市の気候下でも,白人の血清PBI濃度に日本人と同様な夏低冬高の一峰性の季節変動を確認した。白人の冬の血清PBI濃度は日本人のそれより有意に高かった。これは冬の白人の居住室温がたまたま4°C低かったためと考察した。
2) 白人のあいだでも,日本気候下に滞在した年数の違いで,その血清PBI濃度の季節変動の様相が異なった。つまり滞在年数の1年未満群は3年以上群に比べて気候の激変季の秋と春に血清PBIの変化が激しい傾向であった。これは両白人群の日本気候下での順応程度の違いによったものと考察した。
3) 血清PBI変動率とBMR変動率との間に周知の有意な正相関性を確認した。その回帰係数は白人に有意に大きかった。またPBIとBMRとの関係における両値の逐月推移で白人,日本人ともに,夏から冬に向けてPBIがBMRに先行上昇し,冬から夏に向けてはPBIが先行低下し,PBIとBMRの増減に時相のずれを観察した。
4) 血清PBI濃度と環境温度との関係においては,日本人,白人ともに有意な高い負の相関性を認め,環境温度でも居住室温の方が外気温よりも相関性が高い傾向にあった。またこの関係について,年間を向寒期と向暖期の2期に分けて見ると,環境室温が同じでもPBI濃度は向寒期に高い傾向であった。
5) 血液水分にも季節気候にともなう変動が,白人にも日本人同様に認められた。

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