日本衛生学雑誌
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抗血小板凝集効果を用いたヒト冠動脈の内皮細胞由来弛緩因子の測定
岸本 拓治福沢 陽一郎阿部 美代子橋本 道男多田 學
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1992 年 46 巻 6 号 p. 1043-1050

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抄録

内皮細胞由来弛緩因子(EDRF)に関する簡便な間接的測定方法を確立するために,ヒトおよび犬の冠動脈を用いて,トロンビンに対するヒトおよび犬の血小板の反応性を観察した。冠動脈の分離リングは犬と心臓移植患者から入手した。正常な内皮細胞を有する犬およびヒトの冠動脈を添加することにより,トロンビンにより引き起こされる血小板凝集を阻害したが,内皮細胞を剥離した冠動脈では,血小板凝集は阻害されなかった。サイクロオキシゲナーゼ阻害剤のインドメサシンで前処理した冠動脈では血小板凝集阻害作用が明らかに低下した。インドメサシンで前処理した冠動脈の抗血小板凝集作用は,EDRF産生の刺激剤であるアセチルコリンやヒスタミンにより,またEDRFの半減期の延長するスーパーオキシドディスムターゼにより増強したが,EDRFの阻害剤であるヘモグロビンにより抗血小板凝集作用は阻害された。これらの結果は,ヒト冠動脈の内皮細胞が犬冠動脈と同様にEDRFを産生し血小板凝集を阻害すること,またこの簡便な実験モデルは環境中の諸化学物質のヒト冠動脈由来EDRFへの影響を検討するために有効であることを示唆している。

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